誰でも「頭がいい人」のように思考するためのツール「フレームワーク」。だが世の中には、いろいろなフレームワークが溢れていて、「いざ使ってみよう!」というときにどれを使えばいいのかわからない…。こんな悩みをかかえている人も多いだろう。それを解決してくれるのが、『グロービスMBAキーワード 図解 基本フレームワーク50』だ。厳選されたフレームワークだけを紹介し、使い方のコツをシンプルにまとめた非常に便利な1冊だ。本連載では、本書の内容から、「誰でも実践できる考えるワザ」をお伝えしていく。

グロービスMBAキーワード 図解 基本フレームワーク50Photo: Adobe Stock

マトリクスとは?

 マトリクスもMECE的な発想に基づいており、本書で取り上げるさまざまなフレームワークのベースになっています。

 物事を構造的に把握する上でも代表的なツールと言っていいでしょう。

 マトリクスは、大きく分けるとテーブル型ポジショニングマップ型の2つのスタイルがあります。

 テーブル型は、「メリット/デメリット」「重要度が高い/重要度が低い」など、定性的な側面から情報を整理するときに多用されます。SWOT分析が、代表的なテーブル型のマトリクスです。

 テーブル型のマトリクスをつくる際には、情報がどのセル内に分類されるかを明確にすることが大切です。

 たとえば自分の抱えている仕事を、「キャリア上重要/非重要」「得意/不得意」のマトリクスで分類する際に、「この仕事のキャリア上の重要度は中くらいだな。線上に乗せよう」などと曖昧なことを言っていては、マトリクスは完成しません。

 ある程度割り切って「重要/非重要」を明確にして各セルに書き込みます(あえて中くらいの位置に置くこともなくはないですが、その場合はそうする明確な理由づけが必要です)。

 その代わりいったん分類してしまえば、その後の行動も明確になります。

 たとえば「キャリア上重要にもかかわらず不得意」のものがたくさん見つかったら、まずそれをどう潰すかを考えるのです。

 一方、ポジショニングマップ型の方は、「“どのくらい”重要か」「“どのくらい”緊急か」のように、程度や、同じ象限の中でも相対的な位置が重視されるツールです。

 数値でしっかり位置を特定できる場合には、軸にスケールをいれてプロットします。

 テーブル型ほど明確に各セルに分類するわけではありませんが、その分、より図解的で直感に働きかけることができます。

 ポジショニングマップ型で特に問題となるのが、縦軸横軸それぞれの中心点をどこにとるかです。

成長率の高低」「顧客満足度の高低」といった数字が絡む軸は、どの数字を中心に置くかは目的も踏まえた上で慎重に決定する必要があります。

 なお、マトリクス分析は2×2の4象限に分けることが最も多く、かつ視覚的にも分かりやすいですが、場合によっては3×3の9象限に分けたりすることもあります。

事例で確認

 図表3-2はコンサルティング会社のBCG(ボストン・コンサルティング・グループ)が提唱したバリューポートフォリオと呼ばれるマトリクス分析です。

 簡易版はテーブル型で表すこともありますが、ここでは売上高の大きさ(円の面積)とともにポジショニングマップ型で表しています。

 この企業の最大の問題は、本来最も大事にしたい本命事業の売上げが相対的に少なく、ビジョンとの整合性が少ない、機会事業であるC事業の占める比率が非常に高くなっていることと言えそうです。

 イメージとしては、たまたま技術シナジーを活かして手掛けた傍流事業が当たって、最大の事業になったような感じです。

 この会社としては、本命事業や課題事業をもっとテコ入れして数を増やしたり売上高や収益性を上げるか、もしくはビジョンを見直してC事業を核に据える意思決定をするかを決める岐路にあると言えそうです。

用いる場面
・マトリクスにサンプルをプロットすることで、どのような傾向が生じているかを見極める
・経営資源や時間をどこに投下したらよいか、そのポイントを見極める
・会社や自分自身の成長・発展の方向性を模索する
「マトリクス」を使うコツ・留意点
1.
マトリクスを有効たらしめる最も重要なポイントは軸の設定です。
目的を正しく理解した上で、それにかなう軸を設定することが望まれます。
たとえば従業員の実態調査を行い人事施策に活かす場合、「スキルの高低」と「モチベーションの高低」のマトリクスを作り、従業員がどのセルに多くプロットされるかを調べるのは非常に有効でしょう。
一方で、「正社員/非正社員」の軸と「人件費の高低」の軸で分析を行っても、多くの組織ではあまり有効な示唆は得られないでしょう。

2.
本文でも触れましたが、軸の中心点をどこにとるかで全く見える風景が異なってきます。
たとえばファンドマネジャーの評価に関してマトリクス分析をする際、そのパフォーマンスの中心点の候補としては、「ゼロ」「平均」「TOPIXのパフォーマンス」などが考えられます。
しかし、仮にTOPIXが10%ダウンした年に、マイナス5%のパフォーマンスを残したファンドマネジャーをプラス側のセルに入れるかというと反論が出そうです。目的を意識した上での適切かつ納得感のある中心点の設定が必要です。