幼い子どもが殺人・誘拐・わいせつ行為などの被害に遭う事件が後を絶たない。防犯教育の重要性が叫ばれて久しいにもかかわらず、なぜ日本ではこうした犯罪がなくならないのか。要人警護・身辺警護の専門家である筆者は、日本における「子どもの防犯」の在り方について違和感を覚えている。中でも、対策の王道とされる防犯ブザーや、よく使われる防犯標語「いかのおすし」の効果には疑問符がつく。そう言える要因を詳しく解説する。(国際警備会社「CCTT」代表取締役 小山内秀友)
要人警護のプロが覚えた
日本の「子どもの防犯」への違和感
日本国内で行われている子どもの防犯活動や防犯指導について、身辺警護・要人警護を専門とする筆者は、長年なんとも言えない違和感を覚えてきました。
この違和感はどこから来るのかを突き詰めて考えた結果、大きく三つの要因があるという結論に至りました。今回はその詳細を、子どもを守るための防犯対策と併せて解説します。
違和感の正体(1)
そもそも “防犯”の考え方が間違っている
日本よりも危険度が高く、凶悪犯罪も多い南米などの諸外国において、日本国内と同様の防犯活動や防犯指導はそもそも行われていません。
例えば、「子どもに防犯ブザーを持たせる」という防犯活動。日本では一般的ですが、本当に有効なのでしょうか。防犯ブザーとは、ひもを引っ張ったり、ボタンを押したりすると大きな音を発する道具ですが、見方を変えれば「大きな音が鳴る“だけ”の道具」です。
以前、防犯ブザーを販売しているショップに「なぜ、この道具が子どもの防犯になるのか?」と聞いて回ったことがあります。いろいろな答えがありましたが、店舗側が主張する防犯効果をまとめると次のようなものでした。