2月18日、北朝鮮が大陸間弾道ミサイル(ICBM)級のミサイル1発を発射、北海道西方の排他的経済水域(EEZ)内に落下した。さらに2月20日にも、落下したのはEEZ外ながら弾道ミサイル2発が発射されている。今回は発出されなかったが、今後も北朝鮮がミサイルを発射し、日本の領域に落下したり上空を通過したりすれば、Jアラート(全国瞬時警報システム)が出るだろう。Jアラートが鳴ってから、ミサイルが着弾するまでは数分しかない。もし自分のいる場所の近くにミサイルが落ちた場合、生き残るために、その数分間で何をしたらいいのだろうか?(アステル 岩瀬めぐみ)
2022年、北朝鮮のミサイル発射は過去最多の37回に及んだ。10月以降は緊急情報を伝えるJアラートが何回も発出されたが、頻度が高かったがために「Jアラート慣れ」「ミサイル慣れ」してしまった感もある。「でも、どうせ日本には落ちないんでしょう?」という油断が生まれる回数ともいえる。
しかし、防災・危機管理や民間防衛に詳しい濱口和久教授(拓殖大学特任教授・防災教育研究センター長)は「いつかはミサイルが日本に落ちるときが来る、と考えて備えをするべき」と警鐘を鳴らす。Jアラートが出されてから着弾までの猶予は数分しかない。その数分で命を守るためには何をすればよいのか、濱口教授に話を聞いた。
Jアラートが鳴ってからミサイルが
落ちるまで、猶予は1~2分
Jアラート(全国瞬時警報システム)は、弾道ミサイル情報や緊急地震速報、津波警報など、対処に時間的余裕がない事態に関する情報を政府(内閣官房・気象庁から消防庁を経由)から送信し、市町村防災行政無線(同報系)などを通じて、国民に24時間体制で伝達するシステムのことをいう。弾道ミサイルが飛来する可能性がある場合には、市町村防災行政無線などが自動的に起動して屋外スピーカーでの放送が行われ、携帯電話に緊急速報メールが配信される。
ところが、瞬時とはいうものの、現実にはなかなかそうはいかない。弾道ミサイル情報がJアラートとして発信されるまでには、米軍からの情報や自衛隊、内閣官房、総務省消防庁といくつもの機関を経由しなくてはならないからだ。
そもそも、北朝鮮から弾道ミサイルが発射されて日本に飛来するまでにかかる時間は、数分から最大でも10分ほどと極めて短い。弾道ミサイルの種類、発射方法、発射場所や日本のどこに着弾するかで時間は異なるが、Jアラートが鳴るまでに数分かかることを踏まえると、我々が音を聞いてから命を守るために与えられる猶予は1~2分といったところだろう。2022年11月には、日本の上空を通過する予想時刻より「後」にJアラートが発信されるという事態も起きている。
政府は対象エリアを絞り込むための情報分析にかかる時間を削って広範囲にアラートを出すようにシステム改善を進めているものの、これで短縮できる時間はおよそ1分だという。どちらにしろ、Jアラートが鳴ってからミサイルが飛んでくるまでには数分しかないということだ。