全要件を100%満たす
「完全なメタバース」はない

 本書では、以下の七要件を満たすオンラインの仮想空間をメタバースと定義したいと思います。

(1)空間性:三次元の空間の広がりのある世界

(2)自己同一性:自分のアイデンティティを投影した唯一無二の自由なアバターの姿で存在できる世界

(3)大規模同時接続性:大量のユーザーがリアルタイムに同じ場所に集まることのできる世界

(4)創造性:プラットフォームによりコンテンツが提供されるだけでなく、ユーザー自身が自由にコンテンツを持ち込んだり創造できる世界

(5)経済性:ユーザー同士でコンテンツ・サービス・お金を交換でき、現実と同じように経済活動をして暮らしていける世界

(6)アクセス性:スマートフォン・PC・AR/VRなど、目的に応じて最適なアクセス手段を選ぶ事ができ、物理現実と仮想現実が垣根なく繋がる世界

(7)没入性:アクセス手段の一つとしてAR/VRなどの没入手段が用意されており、まるで実際にその世界にいるかのような没入感のある充実した体験ができる世界

 つまり、メタバースとは、単なるゲームではなく、現実を代替するような(あるいは超えるような)充実感のある体験ができ、稼いで生きていく事ができる仮想空間、「そこで人生が送れる人類の新たな生活空間」であると考えられます。

 これらの要件はそれぞれゼロかイチかと言ったものではなく強弱の幅がある概念で、当然ですが現時点で全ての要素を百点満点で満たす「完全なメタバース(Perfect Metaverse)」は存在しません。ただし、全ての要素を最小限満たす「必要最小限のメタバース(Minimum Viable Metaverse)」は存在します。