画像:バーチャル美少女ねむ氏バーチャル美少女ねむ氏が暮らすメタバースの世界

仮想現実(VR)の技術革新とともに、注目度を増すメタバース。その定義づけや革新性についてはさまざまな意見が存在する。この記事では黎明期から仮想現実で暮らすバーチャル美少女ねむ氏が、メタバースとは何かを紐解いていく。

※本稿は、バーチャル美少女ねむ『メタバース進化論――仮想現実の荒野に芽吹く「解放」と「創造」の新世界』(技術評論社)の一部を抜粋・編集したものです。

多数の有識者が
概念・定義を提案

 現在「メタバース」という言葉が使われるとき、大まかには「リアルタイムに大規模多数の人が参加してコミュニケーションと経済活動ができるオンラインの3次元仮想空間」を指すことが多いです。その具体的な定義について見ていきましょう。

 かつてのセカンドライフ(※2007年に社会現象となった、米リンデンラボ社が提供する仮想空間)ブームの頃と比べて、今日ではインターネット環境やパソコンのスペックが飛躍的に向上しました。VR元年と言われた2016年には、ついにOculusとVIVEの2社から一般ユーザー向けの普及用VRゴーグルが発売され、個人でも仮想空間の体験を楽しむ環境がようやく整いつつあります。次章で解説するソーシャルVRなど、具体的なサービスも始まりました。

 こうしておぼろげながら未来への見通しが立ってきたなか、Roblox社CEOのデイビッド・バシュッキなど、現在数多くの有識者が今後我々が向かうべきメタバースの具体的な概念・定義を提案していますが、未だ統一した見解は存在しません。メタバースは今まさに進化の最中にある概念であり、1980年代に今の「インターネット」を想像するのが難しかったように、今後もメタバースが当たり前のものとして普及するその時までその見解が完全に一致することはないでしょう。ただし、「大規模性」「経済性」「アクセス性」「没入性」は定義の中で挙げられることが多く、私も必須だと考えています。

全要件を100%満たす
「完全なメタバース」はない

 本書では、以下の七要件を満たすオンラインの仮想空間をメタバースと定義したいと思います。

(1)空間性:三次元の空間の広がりのある世界

(2)自己同一性:自分のアイデンティティを投影した唯一無二の自由なアバターの姿で存在できる世界

(3)大規模同時接続性:大量のユーザーがリアルタイムに同じ場所に集まることのできる世界

(4)創造性:プラットフォームによりコンテンツが提供されるだけでなく、ユーザー自身が自由にコンテンツを持ち込んだり創造できる世界

(5)経済性:ユーザー同士でコンテンツ・サービス・お金を交換でき、現実と同じように経済活動をして暮らしていける世界

(6)アクセス性:スマートフォン・PC・AR/VRなど、目的に応じて最適なアクセス手段を選ぶ事ができ、物理現実と仮想現実が垣根なく繋がる世界

(7)没入性:アクセス手段の一つとしてAR/VRなどの没入手段が用意されており、まるで実際にその世界にいるかのような没入感のある充実した体験ができる世界

 つまり、メタバースとは、単なるゲームではなく、現実を代替するような(あるいは超えるような)充実感のある体験ができ、稼いで生きていく事ができる仮想空間、「そこで人生が送れる人類の新たな生活空間」であると考えられます。

 これらの要件はそれぞれゼロかイチかと言ったものではなく強弱の幅がある概念で、当然ですが現時点で全ての要素を百点満点で満たす「完全なメタバース(Perfect Metaverse)」は存在しません。ただし、全ての要素を最小限満たす「必要最小限のメタバース(Minimum Viable Metaverse)」は存在します。