人生100年時代は、健康こそ最大の資産です。
しかし40歳を越えると、がん、糖尿病、腎臓病といった病気を避けては通れません。国立がん研究センターによれば、40~49歳のがん患者数は、30~39歳と比べると3倍以上です(2018年)。もちろん50代、60代と年齢を重ねるにつれ、がん患者数はどんどん増えていきます。
本連載は、毎日の食事から、大病を患ったあとのリハビリまで、病気の「予防」「早期発見」「再発予防」を学ぶものです。著者は、産業医×内科医の森勇磨氏。「予防医学ch/医師監修」の管理人でもあり、動画は「わかりやすい説明で参考になる」「怖いけど面白い」と評判で、チャンネル登録者は27万人を超えています。初の単著『40歳からの予防医学 医者が教える「病気にならない知識と習慣74」』を出版し、感染症医・神戸大学教授の岩田健太郎氏が「安心して読める健康の教科書」と推薦文を寄せています。本日は、花粉症の寄稿記事です。

「つらすぎる花粉症」に効く、たった1つの治療法とは?Photo: Adobe Stock

今年こそ花粉症を治したい! 治療法は?

 2023年の春の花粉飛散量は「過去10年で最多」とも言われ、多くの方が花粉症の鼻づまり、目のかゆみ、くしゃみといった症状に苦しみました。

 花粉症は基本的には自然治癒が見込めない病気です。であるなら、1日も早く治療して、毎年の苦しみから解放されましょう。

 結論からお話しますと、現在有効とされているのは「舌下(ぜっか)免疫療法」という治療です。

「免疫療法」という響きから少し警戒してしまう人もいるかもしれませんね。しかし、有効性がしっかり証明された上に保険適応になっている治療法で、スギ花粉症の根本治療として行われています。

 本人に特有のアレルギーの物質を少しずつ投与し続けることによって、そのアレルギーに体を慣れさせ、アレルギー反応が出ないようにする治療です。

 もともと花粉症の人の体内では、本来スギ花粉に対してそこまで過剰に攻撃する必要がないにもかかわらず、プログラムに準じて免疫機能が激しく反応してしまうため、鼻づまりや目のかゆみなどの症状があらわれます。

 この免疫機能に、「スギ花粉はウイルスや細菌のような悪い敵ではなく、そんなに強い攻撃を加えなくても良い」ことを理解してもらうわけです。そのために、毎日毎日少量のスギ花粉の物質を舌の上から吸収することで、長い時間をかけて理解していってもらう治療になります。

 毎日行う必要はあるのですが、舌の上に、1分間スギ花粉のタンパク質を置いておくだけなので、手間もかからず、非常に習慣化しやすい治療法と言えるでしょう。

 当然アレルギー物質を体に取り入れるため、慎重に行う必要はありますし、最初はのどの違和感やかゆみといった症状が出る方もいます。ただ、徐々に体が慣れて症状が起きなくなっていくことが多いですし、安定期に入るまではしっかりと医師が安全に配慮して治療を行います。

いつ始めればいい?

 舌下免疫療法を始めるタイミングは、スギ花粉が飛散していない時期。

 つまり花粉が舞う量が減ってくるこれからの時期が絶好のタイミングになりますので、是非花粉症で苦しんだ方は今年こそは治療を始めてみてはいかがでしょうか。

 1点、知っておいて欲しいのが「治療期間」について。

 先ほど「長い時間をかけて理解してもらう」と説明しましたが、この舌下免疫療法は、一般的には3~5年は継続する必要があります。免疫機能の性格を変えるのにはそれだけの時間が必要だということです。

 ただし、それでもその後の人生で花粉症に悩むことがなくなるのであれば、続けた方が楽な場合の方が多いでしょうし、習慣化してしまえば非常にストレスのない治療になりますので、花粉症に苦しんでいる方にとってはおすすめできる方法と言えるでしょう。

 また、適応年齢も5歳以上から適応になっていますので、お子さんが花粉症の症状に苦しんでいる場合は、早いうちから治療しておくと、後々が楽かもしれません。

どの病院にいけばいい?

 舌下免疫療法が行われているのは主に「耳鼻咽喉科」の開業医になります。もしくは一部の内科でも行えますので、近所のクリニックを調べてみてください。

 病院での治療については、舌下免疫療法に限らず、「知っているか知らないか」でその後の人生のQOLに大きく影響を及ぼすものもありますし、治療と言っても意外にそこまで手間のかからないものもあります。

 自身の悩みや健康に直結する医学知識はしっかりと身に着けていきましょう。