個人も企業も大混乱! インボイス&改正電帳法の落とし穴#1Photo:PIXTA

今から約30年前、紆余曲折を経て1989年に導入された消費税。この消費税と仕入税額控除の知識がなければ、インボイス制度で何が問題になるのか、について理解することは不可能だ。特集『個人も企業も大混乱! インボイス&改正電帳法の落とし穴』(全15回)の#1では、複雑怪奇な消費税の仕組みを分かりやすく解説する。(ダイヤモンド編集部編集委員 藤田章夫)

インボイス制度の必須知識
消費税と仕入税額控除の仕組み

 今からさかのぼること約30年前。1989(平成元)年4月に消費税が導入された。ここに至るまで、実に10年の歳月がかかった。

 消費税が導入される、さらに10年前。79年に時の大平内閣が財政再建のために「一般消費税」導入の準備を閣議決定したが、小売業者や消費者団体などの大反対に加え、野党もこぞって反対。同年10月の総選挙のさなかに大平正芳首相は増税を断念したものの、自民党は大敗を喫した。

 次の内閣、中曽根康弘首相が政権終盤になって売上税法案を掲げたが、地方選挙で自民党が苦戦を強いられ、この法案は廃案となった。ようやく消費税を導入できたのは、竹下内閣の時だ。

 その後、消費税は導入当初の3%から段階的に引き上げられ、30年かけて2019年10月に現行の10%となった(標準税率)。それと同時に、外食や酒類を除く食品や週2回以上発行する新聞の定期購読などには、8%が維持される軽減税率が設けられた。

 そして税率が複数になったことをきっかけにして、消費税額を明確にするため、昨年秋ごろから話題となり始めた「インボイス制度(適格請求書等保存方式)」が23年10月1日から導入されることになった。

 このインボイスを巡っては、個人事業主を中心とする零細事業者の苦境が取り沙汰され、話題となっている。だが、それだけではない。零細事業者と取引のある企業にとっても悩ましい問題が数多く発生するのに加え、さまざまな業種や会社員にとっても、インボイスにまつわる意外な落とし穴が幾つも存在しているのだ。

 それら諸問題は今後の配信記事で詳述していくが、インボイスが引き起こす問題を理解するためには、消費税ならびに仕入税額控除の仕組みについて必ず知っておかねばならない。次ページ以降で徹底解説していこう。