戦争への備え再び、日本とドイツの避けがたい道Photo:NurPhoto/gettyimages

――筆者のイアン・ブルマ氏は米バード大学教授(人権・ジャーナリズム)。近著に「The Collaborators: Three Stories of Deception and Survival in World War II(協力者たち:第2次大戦の生き残りと策略に関する三つの物語)」がある

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 ドイツのオラフ・ショルツ首相は、今この瞬間を「時代の転換点」と呼んでいる。日本では、お笑い芸人のタモリが発した「新しい戦前」という(やや曖昧な)フレーズが、ほぼ同じことを表すのに使われている。すなわち、ロシアによるウクライナ侵攻を機に、両国は自国の軍事面の備えをより真剣に考えざるを得なくなったということだ。

 昨年2月、ショルツ氏は1000億ユーロ(約14兆0600億円)の資金を投じてドイツのなおざりにされてきた軍事力を強化し、北大西洋条約機構(NATO)が加盟国に求める国内総生産(GDP)比2%という国防費の基準を超えることを約束した。岸田文雄首相は先週、ウクライナを電撃訪問し、第2次世界大戦後の日本の首相として初めて戦地に足を踏み入れた。岸田氏は終戦後に米国の法学者が起草した平和主義憲法の制約を依然として受けながらも、今後5年間で防衛費を50%増やし、仮に日本が攻撃されれば、敵の標的に向けて反撃できるミサイルを保有すると宣言している。