職場で困っている人を見かけても、「おせっかいだったらどうしよう…」と躊躇したり、「たぶん大丈夫だろう…!」と自分に言い訳したり……。
気づかいをするときには、つい「心の壁」が現れてしまい、なかなか一歩が踏み出せないことが、あなたにもあるのではないでしょうか?
この連載では、「顧客ロイヤルティ(お客さまとの信頼関係づくり)」をベースに、ビジネスセミナーへの登壇やコミュニケーションスキルの研修講師を通して、全国200社・2万人以上のビジネスパーソンに向けて教えてきた『気づかいの壁』の著者、川原礼子さんが、「気がつくだけの人」で終わらず、「気がきく人」に変われる、とっておきのコツをご紹介します。
感情を入れずに「苦言を伝える」
組織で働いていると、「苦言」を言わないといけない場面に遭遇します。
「苦い言葉」は、言われる側も嫌なものですが、伝える側にも大きなエネルギーがいります。
あなたも、「これはどう伝えるべきか……」と、悩んだ経験があるはずです。
たとえば、こちらの予定に配慮のない会議招集の連絡が来たとします。
早速、こんな返信メールを送りました。
「来期オフィス環境改善会議の参加依頼をもらいましたが、期末なので予定が読めません。この時期にやる意味はなんなのでしょうか。オフィス環境の改善前に、社員の状況を考えてください。」
苦言を呈する目的は、相手に「こちらの事情を理解してもらうこと」です。
ところが、こんなタッチで書くと、相手は「理解」より先に、「感情的だ」「そこまで言わなくてもいいじゃないか」と、マイナスな感想を持つ可能性があります。
とはいえ、相手には自分が困っていることは知っておいてもらいたいですよね。
「へりくだる」のは避けよう
次のように、「困っている」+「提案」のセットで伝えるのが有効です。
いいメール
今回のオフィス環境改善会議については、参加を見送らせてください。
残業軽減の中、年度末の納期に追われ、一時間でも席を空けることが難しい状況です。
ただ気になるテーマなので、次回は参加したいと思っています。
来期は2月に開催するのはいかがでしょうか。その頃であれば参加します。
こんなメールだったら「理解」にプラスして、配慮のなかった行動に「反省」という気持ちも湧いてきます。
「気づかい」あるメールを送ると、自分がほしい反応が返ってきやすくなるものです。
ただ、次のように、気をつかいすぎて、必要以上にへりくだることはありません。
ダメなメール
このたびは来期オフィス環境改善会議の参加依頼までいただき、ありがとうございます。
いつも改善委員会事務局の皆さんには、感謝しかありません。
そんな中、とても申し上げにくいのですが、期末が近づいているため予定が調整しにくい状況です。
せっかくお声をかけていただきましたのに、申し訳ございません。
これでは、苦言を伝えるはずが、腰の低いお願いメールでしかありません。
相手に「迷惑をかけた」という意識が生まれず、また同じような連絡が来るかもしれません。
お互いの領土を守るためにも、「困っている」ことは、ハッキリ伝えましょう。
株式会社シーストーリーズ 代表取締役。
元・株式会社リクルートCS推進室教育チームリーダー。
高校卒業後、カリフォルニア州College of Marinに留学。その後、米国で永住権を取得し、カリフォルニア州バークレー・コンコードで寿司店の女将を8年経験。
2005年、株式会社リクルート入社。CS推進室でクレーム対応を中心に電話・メール対応、責任者対応を経験後、教育チームリーダーを歴任。年間100回を超える社員研修および取引先向けの研修・セミナー登壇を経験後独立。株式会社シーストーリーズ(C-Stories)を設立し、クチコミとご紹介だけで情報サービス会社・旅行会社などと年間契約を結ぶほか、食品会社・教育サービス会社・IT企業・旅館など、多業種にわたるリピーター企業を中心に“関係性構築”を目的とした顧客コミュニケーション指導およびリーダー・社内トレーナーの育成に従事。コンサルタント・講師として活動中。『気づかいの壁』(ダイヤモンド社)が初の著書となる。