おすすめポイント
『対話力』と題された本書のテーマは「対話」である。本書の目指す対話は、単なる会話や情報交換にとどまらない。話すことを通して、話し手と受け手が協力して新しい価値を生み出すことこそが対話である。
本書は、話すことのスペシャリストである阿川佐和子氏と齋藤孝氏の対談形式で進んでいく。阿川氏は長年の仕事の経験を交えながら対話のテクニックや心がまえを語り、齋藤氏は授業での実践を紹介しながら教育的な視点を付け加えていく。2人の対話を通して、目指すべき「対話」のあり方が浮かび上がってくる本書の様子それ自体が、対話のお手本と言ってよいだろう。
2人の様子を見ていると、こんな対話が実現するのはこの2人だからであって、自分には無理だと尻込みをしてしまうかもしれない。人見知りで話すことに苦手意識がある人ならばなおさらだ。だが、阿川氏は、自分も本質的には人見知りな性格だと明かす。インタビューでは毎回自分を鼓舞して、照れを克服している。齋藤氏も、やるしかない状況で無茶ぶりをされる経験を積んできたという。そして、2人はやる前からできないと決めつけずに、がんばって一線を越えてみようと読者に呼びかける。
話すことを生業にしていない人であっても、対話力をつけることは仕事や人生を充実させることにつながるはずだ。対話に使えるテクニックや対話力向上のヒントが掲載されている本書を参考に、対話力を磨くための最初の一歩を踏み出そう。(泉 未来)