インフレ・円安の時代に入った今、資産を預金だけで持つことはリスクがあり、おすすめできない。「先行き不透明な時代」には、これまで投資に無縁だった人も資産を守り・育てるために資産運用を始める必要がある。『このままではあなたの現金の価値が下がる! インフレ・円安からお金を守る最強の投資』(朝倉智也著、ダイヤモンド社)が3月29日に発売された。本書は、投信業界のご意見番が新しい時代を乗り切る「究極の運用法」をアドバイスするお金の入門書だ。大切なお金を守り増やすためには、どうすればいいのか? 本連載では、特別に本書から一部を抜粋・編集してその要旨をお伝えしていく。
運用期間を長くし、
資産を分散するほど、リスクは低減する
リスクを抑える運用方法として広く知られているのが、「長期・分散・積み立て」投資です。
近年は金融庁も「長期・分散・積み立て」を強力に推進していますから、皆さんも耳にしたことがあるのではないでしょうか。
ここで、「長期投資」「分散投資」「積み立て投資」がどのようにリスクを抑えてくれるのかを確認しておきましょう。「長期投資」については、過去のデータから、投資では「運用期間が長ければ長いほど価格のブレが小さくなる」ということがわかっています。
下図は、先ほどと同様に各月末時点でそれぞれの資産に投資したケースで「1年間」「5年間」「10年間」保有した場合の最大上昇率と最大下落率を示したものです。
先進国株式に投資した場合、運用期間1年では投資収益のブレは118.4%(65. 0%+53.4%)です。それが、5年間保有すればブレは33.8%(22.7%+11.1%)に、10年保有すると14.7%(18.3%-3.6%)まで縮小しているのです。
10年以上をかけて
運用することがリスクを抑えるカギ
運用期間を十分に長く取ることは、リスクを抑えて安定的な収益を目指すことにつながります。
特に、積極的な運用で高いリターンを目指す株式ファンドで運用する場合、最低でも5年、できれば10年以上の期間をかけ、できるだけ長く運用を続けていくことがリスクを抑えるカギになります。
これは資産形成層の方はもちろん、資産活用層の方にも当てはまる話です。資産活用層の方は「長期投資」と聞くと「そんなに長い運用期間はとれないかもしれない」と感じるかもしれませんが、今は「人生100年時代」。仮に65歳、70歳といった年齢から運用を始めたとしても、10年、15年と運用を継続することは十分に可能です。
「分散投資」については、株式と債券など異なる資産を一緒に持つ「資産分散」や、複数の国・地域の資産を一緒に持つ「地域分散」などの方法があります。
分散投資によってリスクが抑えられるのは、値動きが異なる資産を持っておくと、ある資産の価格が下がったときに他の資産の価格上昇で補う効果が期待できるからです。
なお、さまざまな資産に分散する際、株式のようにリスクが高い資産の割合を高めれば保有資産全体のリスクは高まり、逆に債券のようにリスクが低い資産の割合を高めれば保有資産全体のリスクは低くなります。
(※本稿は『インフレ・円安からお金を守る最強の投資』の一部を抜粋・編集したものです)
SBIグローバルアセットマネジメント株式会社 代表取締役社長
1966年生まれ。1989年慶應義塾大学文学部卒。銀行、証券会社にて資産運用助言業務に従事した後、1995年米国イリノイ大学経営学修士号(MBA)取得。同年、ソフトバンク株式会社財務部にて資金調達・資金運用全般、子会社の設立、および上場準備を担当。1998年モーニングスター株式会社(現 SBIグローバルアセットマネジメント株式会社)設立に参画し、以来、常に中立的・客観的な投資情報の提供を行い、個人投資家の的確な資産形成に努める。SBIホールディングス株式会社 取締役副社長を兼務し、SBIグループ全体の資産運用事業を管掌する。主な著書に『全面改訂 投資信託選びでいちばん知りたいこと』『改訂新版 ETFはこの7本を買いなさい』『一生モノのファイナンス入門』(以上、ダイヤモンド社)、『「iDeCo」で自分年金をつくる』(祥伝社新書)、『お金の未来年表』(SB新書)などがある。