初対面の人や仕事の取引先、親しい友人など、どんな相手とでも会話が成立するのが「天気の話」。同じ場所にいれば一緒に体感している天気が話題になり、異なる場所にいて地域差があっても、その「差」が会話の糸口になるなど、最強の雑談テーマだ。ぜひ雑談に使ってほしい二つの天気の雑学を紹介しよう。本稿は、金子大輔『もっと話がおもしろくなる 教養としての気象と天気』(WAVE出版)の一部を抜粋・編集したものです。
雨や雪が降るとき
雲の中では何が起きている?
雲の中では、無数の雲粒が乱舞しています。雲粒とは、雲を構成している粒子で、水滴や氷の結晶でできています。その雲粒が合併を繰り返し、約100万倍以上の大きさとなって、上昇気流でも支えきれなくなって落下してくるのが雨や雪です。
雨には「暖かい雨」と「冷たい雨」があり、日本ではほとんどが「冷たい雨」なので、まずは冷たい雨についてお話ししましょう。
雲の上部はとても気温が低いので、氷晶がたくさんあります。一方で、過冷却の水も混在しています。過冷却の水とは、0度以下になっても凍らないでいる水で、なんらかの刺激を受けると容易に凍ってしまいます。過冷却の水は、氷晶がぶつかることで、その氷晶に凍り付きます。また、雲の中は湿度が高く水蒸気も豊富で、水蒸気も氷晶に凍り付きます。
こうした動きを繰り返すことで氷晶は次第に大きくなり、上昇気流でも支えきれずにやがて「雪の結晶」や「あられ」となって落下していきます。落下する過程で雪の結晶が融け、蒸発せずに地上に届けば「雨」となります。地上気温が3度以下だと雪の可能性が高くなりますが、最終的に雪になるか雨になるかは、地上に落ちてくるまでの湿度や風速などいろいろな要素が関係します。このため、10度近くでも雪になってしまうこともあれば、1度でも雨ということもあります。みぞれは雨と雪が混じって降るもので、雨か雪か、微妙な条件の気温でよく降ります。
一方、暖かい雨は、液体の水でできた雲粒が合併を繰り返して大きくなり、雨粒となって落下してきたものです。しかし、いくら雲の中には雲粒がたくさんあるとはいえ、100万倍もの大きさになるのは気が遠くなるほど大変です。では、なぜ雨や雪が頻繁に降るのでしょうか。ここで登場するのが、雨・雪を降らせるお助けマン「エアロゾル」です。
エアロゾルとは、平たく言ってしまえば空気中に浮遊する塵などの粒子です。空気中には雲粒よりも大きな塵などの粒子が存在していて、それらが「凝結核」となることで水に凝結しやすくなり、雲粒は効率的に大きな雨粒へと成長することができるのです。ちなみに、暖かい雨は熱帯の海に多く、海の波から巻き上げられた塩化ナトリウム(食塩)が、しばしばエアロゾルとして働きます。