歴史的基準で判断すると、米国の労働市場は依然として非常に力強い。先月の就業者数は前月比で23万人超も増え、かつて普通だと考えられていた水準の2倍以上だった。失業率は3.5%と、過去50年以上見られなかった低水準近辺で推移している。
水面下には幾つかの相反する流れがあり、注意深く見れば労働市場は急速に冷え込んでいることが分かる。しかし、インフレが低下に転じ目標の2%に落ち着くと米連邦準備制度理事会(FRB)が結論付けるのに十分なほどは弱まっていない。労働需要はリセッション(景気後退)と関連付けられる水準まで低下してはいないものの、そうなるかもしれない。
その理由を理解するためには、現在作用している三つの異なる力を特定することが役立つ。第1に新型コロナウイルスの感染拡大とその余波、第2に通常の景気サイクル、第3に労働力の供給だ。
これらを順番に見ていこう。