写真:朝の通勤,サラリーマン写真はイメージです Photo:PIXTA

日本では労働力不足が課題と言われている。労働力不足という言葉は、困ったことのように聞こえるが、企業経営者にとっての課題なのであって、労働者にとっては望ましいことともいえる。そうした視点から労働力不足のメリットについて考えてみたい。(経済評論家 塚崎公義)

低成長でも労働力不足にあえぐ理由

 日本経済はバブル崩壊後の長期低迷期を脱していないが、それでも第2次安倍政権下で実行された経済政策「アベノミクス」によって経済成長を目指す中で、労働力不足となった。そして、いわゆる“新型コロナ不況”から緩やかに回復しつつある今、再び労働力不足が深刻化しつつあるようだ。

 従業員が新型コロナに罹患したり、濃厚接触者となって隔離されたりして出勤できない、という足元の労働力不足も話題となっているが、本稿では新型コロナウイルス感染拡大の収束後について考えていきたい。

 アベノミクスで低成長下の労働力不足が発生した背景は、少子高齢化である。現役世代の人口が減る一方で、高齢者の人口が増えれば労働力が不足するのは自然なことであるが、それ以外にも理由がある。それは、高齢者の需要は医療や介護など、多くの人手が必要となる労働集約的なものが多いからだ。