みなさんは「ちゃんと考えて」と言われたことはあるでしょうか? 逆に部下の言動に「あいつちゃんと考えたか?」と思ったことはあるでしょうか? 部下の提言に、口に出すかどうかは別にして「ちゃんと考えたか?」と少し不機嫌な表情を浮かべる場面は、オフィスでたびたび目にします。思いついたアイデアを意気揚々と話したら、思ったより相手の反応が悪かった……という経験をしたことのある人もいるでしょう。この謎の空気の正体を『頭のいい人が話す前に考えていること』の著者である安達裕哉氏が、コンサル22年の知見をふまえて解説します。

頭のいい人が話す前に考えていること
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「怒っているとき」は、だれでも頭が悪くなる

 サセックス大学教授の心理学者、スチュアート・サザーランドは著書『不合理 誰もまぬがれない思考の罠100』の中でこう述べます。

 人間は、怒りや恐怖など強い感情にとらわれると、愚かな行動に走りやすい

 要するに、怒っているときは、だれでも頭が悪くなるのです。
 人間が怒っているときに下す判断は、まず、間違っていると考えたほうがいいでしょう。
 上司から叱責されたとき。同僚から無能だとみなされたとき。大勢の前で恥をかかされたとき。そういったとき、良い判断のできる人はほとんどいません。
 実際私は、上司と喧嘩し勢いで会社を辞めて後悔した人を何人も見てきました。

 頭のいい人は「キレること」「感情的になること」でどれだけ大きな損失を被るか知っています。
 もちろん頭のいい人も感情的になることはあります。しかし、頭のいい人は感情的になったとき、すぐに反応するのではなく、感情をコントロールし、冷静になって考えるほうが、メリットがあることを知っていて、その術を身につけているのです。
 つまり、「話す前にちゃんと考えるということ」は、感情に任せて反応するのではなく、冷静になることだと言い換えられます。

 上司が「お前ちゃんと考えたか?」と少し不機嫌になるのは、感情に任せて話しているように聞こえるからです。
 “感情に任せる”というのは怒りの感情だけではありません。
 頭のいい人は、うまくいっているときほど、リスクはないか? 見落としはないか? などと冷静になって考えることができます。
 自信のあるアイデアも、本当に実行に移す価値のあるアイデアなのか、注意深く調査します。

 私は、コンサルタントとして数々の頭のいい人に会ってきましたが、頭のいい人は、皆、注意深いのです。
「頭のよさ」を構成する要素には、論理的思考や知識の量など、さまざまな要素がありますが、前提として「話す前にどれだけ立ち止まって冷静になれるか」が重要であることを忘れないでください。

安達裕哉(あだち・ゆうや)
ティネクト株式会社 代表取締役
1975年生まれ。筑波大学大学院環境科学研究科修了後、理系研究職の道を諦め、給料が少し高いという理由でデロイト トーマツ コンサルティング(現アビームコンサルティング)に入社。品質マネジメント、人事などの分野でコンサルティングに従事し、その後、監査法人トーマツの中小企業向けコンサルティング部門の立ち上げに参画。大阪支社長、東京支社長を歴任したのちに独立。現在はマーケティング会社「ティネクト株式会社」の経営者として、コンサルティング、webメディアの運営支援、記事執筆などを行う。また、個人ブログとして始めた「Books&Apps」が“本質的でためになる”と話題になり、今では累計1億2000万PVを誇る知る人ぞ知るビジネスメディアに。
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