100円ショップに「浪費」の落とし穴、節約志向の人も思考停止するのはなぜ?写真はイメージです Photo:PIXTA

「値上げ」や「インフレ」がささやかれ、消費者の節約志向が高まる中でも、どこ吹く風でお客を集めているのが100円ショップだ。特に買いたいモノもないのに、100円ショップの看板を見ると、ついのぞいてしまう人も多いだろう。まさに庶民の味方というイメージだが、本当にそうだろうか?そこには浪費を誘う多くのトラップがある。家の中に100均グッズがあふれているという人は、実は要注意なのだ。(消費経済ジャーナリスト 松崎のり子)

100円ショップ好きはお金が貯まらない?

 貯まらない人の家に行くと100均グッズがあふれている――そんな話を聞くことはないだろうか。もちろん、100均グッズをうまく使いこなして節約につなげることは可能だ。ただし、それだけ100円ショップにこまめに通っている証拠だとすれば、無用な買い物をしている可能性も大いにある。

 普段我々はモノやサービスの価値を価格で測っている。この服に、この代金を出すだけの価値があるか?このランチが1000円以上するのは高いのではないか?飲み放題付きで5000円コースは安いのか?

 このように、自分が得られるものがその価格に見合っているか、いちいちジャッジするのは頭を使うし、わりと骨が折れる。おまけに支払った後まで、くよくよ考えたりする。やっぱり高かったんじゃないか、失敗したかも――と。

 それに比べ、100円ショップでは悩まなくていい。なにせ1つ100円だ。並んでいるモノは全部安いに決まっている。だから、額にしわを寄せてあれこれ考える必要もなく、ぽんぽんカゴに入れてしまえるのだ。中には100円ショップ以外の店で買ったほうが安いモノもあるのだが、わざわざ比較はしない。だって、考えたくないのだから。

 本来必要なかった余計なモノまで気楽に買ってしまうのは、この「価格が適正か?」と消費者を悩ませない仕掛けが効いているからだ。最近は、200円、300円、500円などの高価格帯も増えてきたが、それも100円ワールドに入っているので、それほど気にならない。

 さらに、我々は損をするのが大嫌いだが、100円程度なら気にならない。もし失敗したとしてもあきらめがつく。つまり、二重に思考停止させるので、ついつい買い過ぎる。予定以上に買って困ったら、売り場に戻ってエコバッグを追加で買えばいい。たかが100円増えるだけなのだから――という思考に陥る。