お金を増やすには、収入を増やすと同時に、支出を減らす方法がある。この節約がうまく機能しないことがわかっている(写真はイメージです) Photo:PIXTA
物価が上がる一方で、賃金が上がらない昨今、「貯金ができない」「お金が増えない」と嘆く人は多いと思いますが、お金が増えないのには理由があります。大きくお金が増えるチャンスに恵まれ、お金が減るデメリットをぐっと減らすには?これを実現する心理効果を知っているのと知らないのとでは大きな差が生まれます。ポーポー・ポロダクションの『ゼロからわかる 知らないと損する 行動経済学』(日本文芸社)から抜粋・紹介します。
「貯金ができない」本当の理由
●貯金できない人
厳しい経済状況を背景に、余裕のない世帯が多くあります。2020年金融広報中央委員会の家計の金融行動に関する世論調査によると単身世帯で36.2%、2人以上の世帯では16.1%が運用目的の預貯金ゼロと回答しています。
また、経済状況とは別に性格的に貯金ができないという人も多くいます。貯金ができない人は、生活して残ったお金を貯金に回そうと考える人が多いのですが、貯金ができる人は貯金するお金を最初に確保して、残りのお金で生活をしようと計画をする傾向があります。
未来よりも今をつい大事に考えて貯金ができない、そんな人は「現在バイアス」が強く働いている人かもしれません。「現在バイアス」は将来よりも目先の利益に高い価値を感じてしまう、思考の偏りです。
●現在バイアスを測定する
「今だったらみなさんに1万円を差し上げます。しかし、1年待っていただけると上乗せして差し上げるとします。いくら上乗せしたら、1年待ちたいと思いますか」
3万円と答えた人は、1年後にもらえる1万円は今日では2500円の価値しかありません。1万5000円と答えた人は4000円の価値と考えます。ポーポーでは32名にこの質問をしたところ平均1万9781円になりました。最も多かった上乗せ金額は1万円でした。
知るとお金が増える心理効果
●節約を遠ざけてしまう心理効果がある
お金を増やすには、収入を増やすと同時に、支出を減らす方法がありますが、この節約がうまく機能しないことがわかっています。
たとえば、みなさんはよく行くレストランで、いつも同じものを注文していませんか? 新しいメニューに挑戦してみたいと思うものの、いざ注文するといつも同じものを注文してしまいます。他にも節約したいとは思っていても、頻繁にプロバイダーの契約を見直したり、スマホのプランを積極的に確認しないのではないでしょうか。
人は商品やプランが変わることで、より自分にメリットがあることを感じていたとしても、積極的に「変化」を選ばない傾向があるのです。これを「現状維持バイアス」といいます。お金を増やすためにはこのバイアスの存在を知って、積極的に変化を選ぶことが求められています。
●バイアスを機能させようとするメーカー
もし人がこのバイアスを破って、どんどん安いプランに乗り換えられると企業は大きな利益を出せません。そこで企業側もバイアスを働かせる工夫をしています。
新商品は単純に以前のプランと比較して、「安い」と比較できない複雑な提案をしてくることがあります。これはより、変えるのは面倒だと思わせ、現状維持バイアスが働くようにと考える企業側の施策なのです。
支払う方法が違うと、心の痛みは変わる
●クレカでは買い物額が大きくなる
経済活動が心理的な影響を大きく受けている現状を考えると、お金を増やすためには、支出時の感情を知ることは大切だと考えられます。
支払いと心の痛み、購買傾向に関する研究は世界で進められており、支払いをするときは、同じお金であっても、現金かクレジットカードかで、心に感じる痛みは大きく異なります。クレジットカードによる支払いは、現金に比べて支払ってもよいと考える金額が高くなります。
また、商品券での買い物は、現金よりも高いものを購入しやすくなっています。プリペイドカードの支払いは、現金よりも支払い実感度が低く、支払い金額の上昇を招くことがわかっています。
ポイントに関する実験も行なわれており、ポイント残高が多い場合は、支払うときの痛みが低く、ポイント残高が低い場合は、支払いに大きな痛みを伴うことがわかっています。
●キャッシュレス化に伴ない、注意したい点
近年、日本ではキャッシュレス決済が伸びているものの未だ支払いの痛みの大きい現金がもっとも利用されており、それが個人消費の抑制に影響を与えているのではともいわれています。クレジットカード、電子決済など便利になる一方で、高額商品の購入が安易に促進されないように、浪費の観点からは注意していく必要があります。
ネット通販には行動経済学のワナがいっぱい
日本のネット通販の拡大は著しく、富士経済の調査によると2021年は前年比10.1%増の伸びを見せており、2022年は2020年比で20.2%増にまで拡大するのではと試算されています(※)。
ただし、ネット通販には行動経済学で考えられる「ワナ」がたくさんあります。こうしたポイントに引っかからないことも、お金を無駄に使わないためには重要です。
●定期便戦略
毎月、定期的に送られる定期便を利用すると、大変便利です。しかし、本来必要でなかったときに、人は現状維持バイアスが機能するために、すぐに解約手続きを取れなくなってしまいます。なかには初回だけ安い設定になっているところもあり、注意が必要です。
●口コミのワナ
新しい商品を買うとき、多くの人が口コミを確認して、最終的に購入を決定しているのではないでしょうか。販売側もその動線を熟知しており、口コミを増やしてもらったり、よい口コミを書いてもらうことに注力しています。
●条件に注意
安い商品を探していると、単に値段比較だけで商品購入を決めてしまう人がいます。よく見ると送料が割高なこともあり、総額での購入にかかる金額を必ずチェックするようにしましょう。
※富士経済「通販・e-コマースビジネスの実態と今後 2021」







