4月になり新年度を迎えたこの時期、新たな環境に身を置いた人も多いのではないだろうか。学生であれば入学式、社会人であれば仕事の異動や転勤、様々な変化がある。希望通りの進路に就けた人もいれば、思わぬ結果になって新たなはじまりを迎えた人もいるだろう。この春、「選ばれなかった」ことをテーマにした書籍『あの日、選ばれなかった君へ 新しい自分に生まれ変わるための7枚のメモ』(阿部広太郎)が刊行された。4月9日に青山ブックセンター本店で行われた阿部広太郎氏のトークイベントから、一部を再構成してお届けする。
動き出した君に不安は追いつけない
―― 『あの日、選ばれなかった君へ』にどうしても載せられなかった話はありますか?
阿部 広太郎(以下、阿部) そうですね、やっぱりカットしてる部分はあって、中学生の頃すごく孤独で、1人ぼっちで、強く変わりたいって思ってですね。アメフトを始めたんです。チームスポーツを始めたことによって変わることができて、高校生の時に、応援団長になれた!というエピソードを、僕は鼻息荒く書いていたんです。でもここはいらないですねって編集者の人に言われて。話があっちこっち行っちゃってる感じがするから、読み手側からするといらないんじゃないか、みたいなことはありました。でも逆に恋愛の失敗エピソードとかは、僕は書きたくなくて書いてなかったんです。そしたら編集の人に「なんで書かないんですか」って言われて。
―― すごい。
阿部 バレてました。あ、やっぱ気づくかって思って、すごいさらっと提出してたんですけど「絶対入れた方がいいです」って言われて、めちゃくちゃ悶えながら書きました(笑)。
―― ここで参加者の方からの質問です。「10分でどん底から立ち直るにはどうしたらいいですか?」
阿部 皆さんもコンペの結果とかが来て、選ばれてなくてめちゃめちゃ凹んだとか。打ち合わせで後輩の案が採用されてがっくり来たみたいな。そういうことはやっぱりあると思うんです。で、僕の子どもが一歳なんですけど、子どもって本当に不思議で、さっきまで泣いてたのに、次の瞬間ニコニコしてたりとか、切り替えがめちゃくちゃ早い。なんでこんなに切り替えが早いのかなっていうことを考えてて、自分なりに思ったのは、もちろん過去に執着してないっていうこともあると思うんですけど、次、目の前にあるものを全力で見てたりとか、ブロックと遊んでたり。目の前のことに全力を注いでる、没頭する。だから、切り替えることができるんだなと、子どもを見て思ったんです。
―― すぐに集中できるものを見つけると。
阿部 やるべきことは、次こんなこととかやろうとか、自分を注ぎ込むものを見つけること。それがNetflixで韓国ドラマ見るとかでも全然いいんです。自分の心を引っ張られるものを見つける。子どもはそれができるから、本当に切り替えが早い。『あの日、選ばれなかった君へ』の最後のところに「動き出した君に不安は追いつけない」という言葉を書いてるんですけど。
―― いいですね。
阿部 やっぱり動き出すということなんでしょうね。立ち止まった瞬間、凹んだ瞬間って、何かがストップしてるんで。自分がストップしてしまってるのを、自分で動かす。10分以内に動き始めてみる。もちろんね、ジムに行くでも、サウナに行くでもいいんですけど、そういう風に心と体を動かすと、不安は追いつけないと思います。
1986年3月7日生まれ。埼玉県出身。中学3年生からアメリカンフットボールをはじめ、高校・大学と計8年間続ける。2008年、慶應義塾大学経済学部を卒業し、電通入社。人事局に配属されるも、クリエーティブ試験を突破し、入社2年目からコピーライターとして活動を開始。「今でしょ!」が話題になった東進ハイスクールのCM「生徒への檄文」篇の制作に携わる。尾崎世界観率いるクリープハイプがフリーマガジン「R25」とコラボしてつくったテーマソング「二十九、三十」を企画。作詞家として「向井太一」「円神-エンジン-」「さくらしめじ」に詞を提供。自らの仕事を「言葉の企画」と定義し、エンタメ領域からソーシャル領域まで越境しながら取り組んでいる。パーソナリティーを務めるラジオ番組「#好きに就活 『好き』に進もう羅針盤ラジオ」はAuDee(オーディー)で配信中。2015年から、BUKATSUDO講座「企画でメシを食っていく」を主宰。オンライン生放送学習コミュニティ「Schoo」では、2020年の「ベスト先生TOP5」にランクイン。「企画する人を世の中に増やしたい」という思いのもと、学びの場づくりに情熱を注ぐ。著書に『待っていても、はじまらない。ー潔く前に進め』(弘文堂)、『コピーライターじゃなくても知っておきたい 心をつかむ超言葉術』『あの日、選ばれなかった君へ 新しい自分に生まれ変わるための7枚のメモ』(ダイヤモンド社)、『それ、勝手な決めつけかもよ?だれかの正解にしばられない「解釈」の練習』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)。