◆なぜ技術のある専門家ほど「機能」を語ってしまうのか? 顧客が本当に欲しい“未来”の売り方
部下が動かない、Z世代との距離感がつかめない……そんな悩みを解決するのが、ソフトバンク「汐留の母」と呼ばれた澤田清恵著『伝え方ひとつで部下が動き出す 上司の「コミュ力」大全』(ダイヤモンド社)だ。生身のリーダーに求められる最強の武器は生成AIには代替できない「コミュ力(共感力)」。単なる同情ではなく、相手の視点を論理的に理解する「認知的共感」の技術を体系化した、悩める上司たちの「読むサプリ」だ。呼吸を合わせる基本から、自身の無意識を言語化する応用、さらには「飲み会の失敗事例」や「エース部下の退職」といった実例に基づく「しくじり」分析まで網羅。表面的なテクニックではなく、心・技・体を整え、信頼で組織を動かすための実践的ノウハウが詰まった決定版!
※本稿は、『伝え方ひとつで部下が動き出す 上司の「コミュ力」大全』(ダイヤモンド社)より一部を抜粋・編集したものです。

【実録】「学生を集めたい」と悩む歯科医に、私が提案したマーケティング戦略Photo: Adobe Stock

成果を最大化する「視座のコントロール」

ビジネスの場面や対人関係では、状況に応じて「チャンクアップ「具体→抽象」へ話をまとめ上げて全体像を把握する手法)」と「チャンクダウン「抽象→具体」へ話を細分化して行動レベルまで具体化する手法)」を使い分けることが求められますが、特に共感力を深めるにはチャンクアップが重要な役割を果たします。

そこでより理解を深めるために、チャンクアップによって共感力が高まり、仕事に役立った実例を紹介しましょう。

歯科医が直面した「ターゲットに届かない」という壁

ある日、私が定期的に通っている歯科医院の先生から、こんな相談を受けました。

「最近、就活に備えて歯を治療しようという学生さんが増えてきたんですけど、もっと多くの学生さんに来院してもらうには、どうしたらいいと思いますか?」

その先生は、私がかつて人材開発部で採用に携わっていたことをご存じだったのです。

専門性の枠を超え、顧客の「真のニーズ」に潜り込む

私はまず、「就活前の学生さんたちが、ここで治療を受けると、どんなメリットがあるんですか」と尋ねました。これは歯科医の立場から離れて、学生の立場に立つための第一歩、つまりチャンクアップの問いかけです。

すると先生は、「ホワイトニングで歯を白くすると、就活の面接で第一印象がよくなるので、自信を持って笑えるようになるんですよ」と教えてくれました。

「機能」ではなく「未来のベネフィット」を言語化する

私はさらに、「その結果として学生さんにはどんなメリットがあるんですか?」と、さらなるチャンクアップを促しました。

先生は「そうですね~」と少し考えた後、「希望の企業に内定する確率が上がると思います。人は見た目が9割なんていわれますからね」と自分なりの答えを導き出してくれたのです。

共感がビジネスを動かした「納得の瞬間」

そこで私は、「内定率アップ! 笑顔に自信が持てる歯科のトータルクリーニング」というキャンペーンの打ち出しを提案しました。

後日、治療のために再訪した際、先生から「あのキャンペーンをウェブサイトで打ち出したら、1週間で20人以上の申し込みがありましたよ。本当にありがとうございます!」と感謝されました。このようにチャンクアップを通じて共感力が高まると、相手のニーズに寄り添った提案ができるようになるので、ビジネスの成果にも直結するのです。

※本稿は、『伝え方ひとつで部下が動き出す 上司の「コミュ力」大全』(ダイヤモンド社)より一部を抜粋・編集したものです。