頭のいい人が質問する前に考えていること

 それは質問する前に仮説を立てることです。

 先ほどの部長に対する質問も、仮説を立てることでこのように質問できます。

「先日、売上の心配をされていらっしゃいましたが、もしかしたら営業上の課題を感じていらっしゃるのでしょうか。それとも商材、マーケティングなど、他の課題でしょうか?」

 つまり、売上不振の原因は営業にあるのではないか? という仮説を立てたのです。
 するとこう返ってくるかもしれません。

「たしかに、営業に全く課題がないわけではないですが、どちらかというと頭が痛いのは、新規のお客さんの定着が良くないことですね。契約の継続率をなんとかしたいのですが……。」

 売上不振の原因は営業にあるのではないか、という仮説は当たりませんでした。ただ、大事なのは仮説が当たったかどうか、ではありません
 ここでは、仮説を提示することで、“契約の継続率”という課題を引き出すことができました。

 もちろん、このようにすんなり相手の思いを引き出せないこともあります。ただ、仮説を立てて質問するのとそうでないのとでは、回答の“質”が変わってきます。

 仮説を立てて質問することで、相手は「自分のことをちゃんと考えてくれてるな」と思います。すると相手も「ちゃんと考えて答えよう」という気持ちになるのです。

 質問には、「ちゃんと考えているな」という質問と「何も考えてないな」という2種類の質問があります。
「ちゃんと考えて質問する」というのは、質問する前に、相手の立場に立ち、仮説をもって質問するということなのです。

 コンサルタントの世界では、常に仮説という言葉が飛び交います。
 頭のいい人は常に仮説を立てて考えていると言ってもいいでしょう。

 とはいえ、いきなり仮説を立てろと言われても……と思う人もいるでしょう。

簡単に仮説を立てるコツ

 そこでおすすめなのは、「もし仮に私が〇〇の立場だったら……」で前置きしてみることです。

「もし私が部長の立場だったら……プレッシャーに押しつぶされそうになると思うんですが、部長はプレッシャーはないですか?」
「もし私が妻(夫)の立場だったら……」
「もし私が部下の立場だったら……」

 また、反対の意見から仮説を立てて質問することもできます。

「部長の意見に対して、〇〇といった反対の意見も社員から出る可能性もありますが、その場合どう対応しますか?」

 というように。これで「どう思う?」と漠然と聞くよりも、間違いなく返答の質が変わってくるはずです。
 まとめると、仮説を立てて質問するというのは、質問の前に、さまざまな角度から物事を考えて質問するということなのです。

質問の“質”は、
「質問する前に仮説をどれだけ立てられるかどうか」
で決まる。

(※本原稿は『頭のいい人が話す前に考えていること』を抜粋・再編集したものです)

安達裕哉(あだち・ゆうや)
ティネクト株式会社 代表取締役
1975年生まれ。筑波大学大学院環境科学研究科修了後、理系研究職の道を諦め、給料が少し高いという理由でデロイト トーマツ コンサルティング(現アビームコンサルティング)に入社。品質マネジメント、人事などの分野でコンサルティングに従事し、その後、監査法人トーマツの中小企業向けコンサルティング部門の立ち上げに参画。大阪支社長、東京支社長を歴任したのちに独立。現在はマーケティング会社「ティネクト株式会社」の経営者として、コンサルティング、webメディアの運営支援、記事執筆などを行う。また、個人ブログとして始めた「Books&Apps」が“本質的でためになる”と話題になり、今では累計1億2000万PVを誇る知る人ぞ知るビジネスメディアに。Twitter:@Books_Apps