「雑談が苦手」「人前で話すのが苦手」「プレゼンで緊張してしまう」――そんなアナタが参考にしたいのが、TBSの井上貴博アナウンサーの著書『伝わるチカラ』(ダイヤモンド社)だ。アナウンサーとして試行錯誤しながら実践してきた52のことを初公開!「地味で華がない」と自認する著者が、情報・報道番組の最前線で培ってきた「伝わらない」が「伝わる」に変わるテクニック。言葉の引き出し・表現のバリエーションが豊かな人と、そうでない人の違いは、いったいどこにあるのか。著者自身が日常的に行っている情報のインプット法について明かす。
※本稿は、
『伝わるチカラ』(ダイヤモンド社)より一部を抜粋・編集したものです。

語彙力を増やすため“プロが手放さない”ツールとは?

AIに学ぶインプット法

【前回】からの続き 語彙や言い回しを増やし、アドリブ力をつけるときの考え方は、人工知能(AI)の機械学習とほとんど同じです。

例えば、将棋のAIは、膨大な過去の対局データをインプットすることにより、その局面において最も有利な指し手を導き出します。同じように、できるだけ言葉の選択肢をインプットしておくことが大事です。

類語辞典で芋づる式に語彙を増やす

インプットした引き出しのなかからとり出した情報を、その場で思いついたように口にする。結果として、周りの人からはアドリブを効かせ、臨機応変な対応をしているように見えるという仕組みです。

語彙を増やすにあたっては、「類語辞典」が役立ちます。私はスマートフォンに『角川類語新辞典』のアプリをインストールして、ときどき活用しています。

例えば、「さらに」に代わる言葉を辞典で探すと、「なおさら」「ますます」「一層」「一段と」「人一倍」などの言葉が見つかります。そうやって見つかった言葉を頭にインプットしていくのです。

辞書でこまめに語句を確認

また、私がマストアイテムとしているのは「電子辞書」です。10年以上前に購入したものを、いまでも使い続けています。

電子辞書にはアクセント辞典も収載されているので、アクセントを確認するときによく使っています。

語彙力を増やすため“プロが手放さない”ツールとは?

例えば、「映画」の発音は「え」が高い頭高のアクセントなのか、それとも平板に読むのかをアクセント辞典でチェックします(辞典には2つの読み方ともに掲載されています。どちらも不正解ではないのです)。

“知っているつもり”
の言葉の落とし穴

また、自分が使おうとしている言葉の意味が本当に正しいのかを確認するときにも重宝しています。例えば、「さわやか」という単語を調べると、秋の季語であることがわかります。

一般的に「さわやか」は季節を問わず使われる言葉ですが、春のお天気に触れるときに使うと、視聴者のなかには違和感を抱く人がいるかもしれません。そこで「さわやかな天気」ではなく「すがすがしい天気」と言おう、などと判断します。

このように、すでに知っているつもりの言葉、当たり前に使っている言葉でも、あらためて辞書で調べると発見があります。

とにかくたくさんの言葉を
目にする習慣をつけておく

特に使い慣れない言葉を口にする前には、事前に用例が正しいかどうかを確認しておくと安心なのです。

言葉の数は無数にありますし、言葉の組み合わせのバリエーションとなると無限です。

辞書を見ていると、必ず新しい言葉が見つかります。辞書にあたる習慣を身につけて損はありません。【次回に続く】

※本稿は、『伝わるチカラ』(ダイヤモンド社)より一部を抜粋・編集したものです。