「雑談が苦手」「人前で話すのが苦手」「プレゼンで緊張してしまう」――そんなアナタが参考にしたいのが、TBSの井上貴博アナウンサーの著書『伝わるチカラ』(ダイヤモンド社)だ。アナウンサーとして試行錯誤しながら実践してきた52のことを初公開!「地味で華がない」と自認する著者が、情報・報道番組の最前線で培ってきた「伝わらない」が「伝わる」に変わるテクニック。言葉の引き出し・表現のバリエーションが豊かな人と、そうでない人の違いは、いったいどこにあるのか。著者自身が日常的に行っている情報のインプット法について明かす。
※本稿は、『伝わるチカラ』(ダイヤモンド社)より一部を抜粋・編集したものです。
“引き出し”を増やすメリット
語彙や表現の引き出しが増えると、伝えたいニュアンスを正確に伝えられるようになります。また、会話を知的に見せたり、人を笑わせたりできるようにもなります。
臨機応変なアドリブで人を笑わせている芸人さんも、たいていは入念に準備したフレーズをここぞというタイミングで繰り出しているようです。
手練れのお笑い芸人さんですら、準備をしたうえで笑いをとっているのですから、私のようなアナウンサーが、手ぶらで場を盛り上げるなんてことはできません。場を盛り上げるには、芸人さんよりも入念に準備をするしかありません。
「反省」が語彙力や表現力を高める
語彙や表現の引き出しを増やすうえできっかけとなるのが、「反省」です。例えば、友人と雑談をしていて「すごい(すごっ、すげー)」を多用してしまったとき。
あとから「もう少し別の言い方ってできなかったのかな」と反省することで、初めて「もっと言葉の手数を増やさなければ」というスイッチが入ります。
その場その場で“反省”する
実は私は、オンエア中もずっと反省しながらしゃべっています。
「あー、いまのは、こうやって返せばよかった」「さっきは、こっちの言い回しのほうが面白かったな」
1回の放送内で、そういう反省を何十回も繰り返します。
1.5倍速で自分の話が聞きとれるか?
そして、オンエア後にはVTRを見ながら、反省ポイントを再確認します。具体的には、19時に終わるオンエア後、職場で『Nスタ』の録画を見直します。自分がつくった商品やサービスを自分自身で確認するような感覚でしょうか。
ちなみに、映像は1.5倍速で、スタジオ内のやりとりだけを集中的に見直します。1.5倍速にするのは時間短縮以外に、自分の話の明瞭さを確認する目的があります。
ある程度きちんと話せているときは、1.5倍にしても心地よく聞きとることができます。逆にいえば、1.5倍速で聞きとれないようでは、アナウンサー失格だと思っています。
振り返ることで“足りない点”を見つける
話を戻しましょう。録画した映像をチェックしていると、反省すべきポイントが次々と出てきます。オンエア中にも反省はしているのですが、ここでもう一度振り返るわけです。
「あー、あのとき何でこんなに平凡な返しをしてしまったんだろう」「もっと追い打ちをかける一言があってもよかったな」
「ここは薄ら笑いで逃げてしまったな。一言挟むべきだったんだけど、言葉が出てこなかったんだよな」
そんなふうに逐一振り返る過程で、足りなかった言葉が鮮明になります。
“反省する習慣”が言葉の引き出しを増やす
「スベったときにフォローする言葉が足りなかった」と気づいた場合は、そのシチュエーションにハマる言葉を探してインプットしておきます。
この習慣を続けていくと、言葉の引き出しがどんどん増えていきます。ですから、まず大切なのは「反省をすること」なのです。【次回に続く】
※本稿は、『伝わるチカラ』(ダイヤモンド社)より一部を抜粋・編集したものです。