人生100年時代は、健康こそ最大の資産です。
しかし40歳を越えると、がん、糖尿病、腎臓病といった病気を避けては通れません。国立がん研究センターによれば、40~49歳のがん患者数は、30~39歳と比べると3倍以上です(2018年)。もちろん50代、60代と年齢を重ねるにつれ、がん患者数はどんどん増えていきます。
本連載は、毎日の食事から、大病を患ったあとのリハビリまで、病気の「予防」「早期発見」「再発予防」を学ぶものです。著者は、産業医×内科医の森勇磨氏。「予防医学ch/医師監修」の管理人でもあり、動画は「わかりやすい説明で参考になる」「怖いけど面白い」と評判で、チャンネル登録者は27万人を超えています。初の単著『40歳からの予防医学 医者が教える「病気にならない知識と習慣74」』を出版し、感染症医・神戸大学教授の岩田健太郎氏が「安心して読める健康の教科書」と推薦文を寄せています。
あなたはまだ、糖尿病の怖さを知らない
HbA1cは「糖尿病」に関する指標です。HbA1cとは「2~3ヵ月間の血糖値の平均値」を意味します。人間ドック等で血液検査を受ければ、この数値がわかります。
血糖値の高い状態が続くと、血管は傷つき、動脈硬化を招き、さらには心筋梗塞や脳梗塞のリスクを上昇させます。血糖値が平均的に高いと、日常的に血管を傷つけていると言えるのです。
ただ、血糖値は1日の中で激しく変動します。
例えば、食事をした後は急激に血糖値が上昇しますし、空腹のときは下がります。その場で確認した瞬間的な血糖値とHbA1cとのダブルチェック体制をとることで、糖尿病を早期発見します。
糖尿病の本質とは?
誤解している人が多いのですが、糖尿病の本質は「尿の糖分が多いこと」ではなく、「血管を傷つけること」なのです。そのため次のような合併症が生じるのです。
・目に関わる細い血管が傷ついて「糖尿病網もう膜まく症しょう」という状態になり目がかすんだり、蚊のようなものが見えたりする
・尿の中の糖分が増えると、水を引き込み尿量が多くなり、頻尿になったり、のどが異様に渇いたりする
・血糖値が高い状態が続くと、「インスリン」というホルモンが糖分をエネルギーとして利用できなくなり、代わりに筋肉や脂肪を分解する。その結果、体重が減少する
・神経障害により手足のしびれがおきたり、白血球が本来の力を発揮しにくくなり、風邪等を引きやすくなったりする
厄介なことに、糖尿病はある程度進行しないと症状が出ません。気づかないうちに体内の血管や神経をむしばみ、最終的には血流が通わなくなることで足を切断することもあります。それゆえ糖尿病は「サイレントキラー」とも呼ばれています。
HbA1cの値には細心の注意を払わなければいけません。大まかな基準として、6.5を超えると「糖尿病が強く疑われる」となります。5.7~6.4だと「糖尿病予備軍」に分類されます。
「糖尿病予備軍」の不都合な真実とは?
日本には「糖尿病予備軍」が約1000万人いるといわれています。この予備軍にいる人たちは「予備軍だから大丈夫」「年をとったら、誰でも数値は悪くなる」とのんきに考えがちです。
しかし、それは大間違いです。実は糖尿病になっていなくてもこの糖尿病予備軍に該当する時点で、心筋梗塞や脳梗塞のリスクが上がったというデータがあります(※1)
糖尿病ほどではないにせよ、予備軍の人は慢性的に血糖値が高い状態が続いているので、動脈硬化が少しずつ進行しているおそれがあります。
HbA1cが5.7を超えている人は注意して、生活習慣を今すぐ改めてください。
(本原稿は、森勇磨著『40歳からの予防医学 医者が教える「病気にならない知識と習慣74」』を編集・抜粋したものです)
※1 Yuli Huang,et al. Association between prediabetes and risk of cardiovascular disease and all cause mortality: systematic review and meta-analysis. BMJ. 2016 Nov 23;355:i5953.