「日本=おもてなしの国」。国内外で語られがちなイメージだが、本当にそうだろうか。実は、海外旅行に出かけたことで、私たちが“見ないふり”をしていた「あること」に気がついた。GWを目前にインバウンドが急回復している今、考え直してみたい。(経済コラムニスト 大江英樹)
三つ星レストランは“利用者以外”にも
メリットをもたらしている
今月初めに海外に行った。今回は仕事ではなく、まったくの観光でスペインとフランスに行ったのだが、コロナ禍になって以来初めての海外旅行で久しぶりに解放感を味わうとともに、いろいろと考えることがあって面白い旅だった。
最初に行ったのがスペインのバスク地方にあるサンセバスチャンという街だ。
この街は人口18万人だから、日本でいえば小田原市とか岸和田市ぐらいの規模なのだが、なんとそれくらいの大きさの街にミシュランの三つ星レストランが3つもある。スペイン全土で三つ星レストランの数は13ということらしいので、そのうちの3軒がこの街にあるわけだ。サンセバスチャンが「世界一の美食の街」といわれるのは当然かもしれない。
しかしながら、実はサンセバスチャンが素晴らしいのはそういう高級レストランよりもむしろ街角にたくさんあるバルの方だ。安くておいしい店がたくさんある。
妻と2人でおなかいっぱい食べてワインを飲んでも1人2000円もかからない。しかも、どこのお店も非常にレベルが高くておいしい。だから、別に三つ星レストランに行かなくても十分においしいものを楽しめるのだ。では三つ星レストランはあまり存在意義がないのかというと、決してそんなことはない。
私は「三つ星レストラン」という存在には二つの大きな役割があると思っている。