シン富裕層の投資・節税・相続#1Photo:Diamond

国税庁が富裕層を狙って実施する税務調査は、コロナ禍の影響で減少傾向にあったが反転の兆しが見えてきた。2023年度こそ、その「本格再開元年」といえる。その理由とは何か。そして国税庁は今、富裕層の何を注視しているのか。特集『シン富裕層の投資・節税・相続』(全24回)の#1では、元国税専門官が税務当局から見た税務調査の視点を明かす。(元国税専門官 小林義崇)

「週刊ダイヤモンド」2023年4月29日・5月6日合併号の第1特集を基に再編集。肩書や数値など情報は雑誌掲載時のもの。

富裕層を包囲する
国税庁の網

 かつて相続税がかかる日本人の割合は4%ほどだったが、2015年を境に急増し、21年には過去最高の9.3%まで上昇した。

 この理由は、法改正で相続税の基礎控除額などが大幅に縮小されたことにある。法定相続人が3人であれば、改正前には8000万円あった基礎控除額が、改正後は4800万円まで下がった。この改正によって、相続税を申告しなくてはならない人が増え、もともと相続税申告が必要な資産レベルの富裕層の税負担は重たくなる結果になった。

 この法改正が施行された翌年、国税庁は「国際戦略トータルプラン」を公表。富裕層の国際的な租税回避行為や海外の資産隠しに対して、適正・公平な課税を目指す方針を明らかにした。

 それから間もなく国税庁は、富裕層に特化した調査などを行う重点管理富裕層プロジェクトチーム(以下「富裕層PT」)を全国に展開。特に多額の資産を有する富裕層に対して、各種税金を横断して税務調査や情報収集を行っている。

 さらに、これまでの富裕層の節税対策の定番とも言える海外への「資産フライト」や「タワーマンション節税」に対して、国税庁は監視の目を強めている。そして、新型コロナウイルス感染拡大によって下火になっていた税務調査だが、23年度こそ「本格再開元年」となるだろう。その理由を解説したい。