シン富裕層の投資・節税・相続#11Photo:PIXTA

富裕層への課税強化が進んでいる中、「超」が付く富裕層は今後、どのような節税策を取るのか。富裕層の資産管理の専門家は、「王道」といえる海外移住へ回帰するとみる。特に、日本との距離が近い、モノや情報の調達が早い、日本より税金が安いという「近い・早い・安い」がそろったシンガポールに、さらに集まるだろうと見立てを語る。その際に「ドンキ」ことディスカウントストアのドン・キホーテが鍵を握るという。特集『シン富裕層の投資・節税・相続』(全24回)の#11ではその理由について解説する。(アレース・ファミリーオフィス代表取締役 江幡吉昭)

「週刊ダイヤモンド」2023年4月29日・5月6日合併号の第1特集を基に再編集。肩書や数値など情報は雑誌掲載時のもの。

日本の超富裕層たちが
シンガポールを目指す理由

 富裕層、特に保有資産が30億円を超えてくるような超富裕層の次なる節税は、海外移住がお試し的に再燃するのではないかと考えている。

 ここ数年は新型コロナウイルスの影響で出入国が厳しくなり、海外移住のブームは沈静化した。一方で、コロナ禍が一段落し、台湾有事などの地政学リスク、そして日本銀行新総裁による大規模金融緩和の出口戦略のハードランディング懸念などが高まりつつある。

 また、税務的にも富裕層を取り巻く環境は厳しくなっている。2014年以降、国外財産調書制度や出国税が導入され、日本での課税対象でなくなる海外居住期間も5年から10年へ延長。さらに、生命保険などの法人節税商品の厳格化に生前贈与の改悪もあった。

 そしてとどめは、今年から本格化するであろうタワーマンション節税の是正措置だ。

 情報のアンテナ感度が高い超富裕層はこれらの「富裕層包囲網」を敏感に感じ取っているだろう。

 海外移住先としてまず思い浮かぶタックスヘイブン(租税回避地)で、日本人も多く移住する国シンガポール。特に超が付く富裕層は、日本との距離が近い、モノや情報の調達が早い、日本より税金が安い、いわゆる「近い・早い・安い」シンガポールにさらに集まるだろうとみる。

 その最大の理由は「ビジネスのリモート化」と「ドンキ」にある。リモート化の説明は不要だろうが、「ドンキ」とは、総合ディスカウントストアのドン・キホーテだ。

 一体なぜなのか。

 その理由を明らかにするとともに、超富裕層が海外移住へと突き進む背景にある、特有の「ある考え」について解説しよう。