新型コロナウイルスの感染拡大によって敷かれた「令和の鎖国令」が全面緩和され、日本に外国人が押し寄せている。単なる観光目的だけではない。ニッポンの安過ぎリゾート地を爆買いするための、いわば“視察”なのだ。しかも、今やタイなど東南アジアの富裕層も目立っている。特集『貧国ニッポン 「弱い円」の呪縛』(全13回)の#11では、今や物価高騰すら招いている北海道・ニセコに次ぐ「進駐先」になるのは、どのエリアかを明らかにする。(ダイヤモンド編集部 堀内 亮)
億超えの超高級マンションに
タイ人富裕層「こんなもんか」
「令和の鎖国令」が全面緩和されてから1カ月が過ぎた2022年11月中旬、タイのある財閥グループの幹部約30人が、ニッポンの首都、東京に降り立った。
タイの超富裕層である彼らが待ち望んだ日本への出張は、ビジネス目的だけではない。「安いニッポン」の不動産を物色しに来たのである。
海外富裕層向けに高級不動産を仲介するリストインターナショナルリアルティ(本社:横浜市)の案内の下、タイ人富裕層の“ご一行さま”が視察したのは、東京都港区の超高級マンションだった。
1戸当たり1億円を超える“億ション”にも、彼らは「こんなもんか」とさして驚く様子はなかったという。一般的な日本人にとって高根の花である億ションですら、リーズナブルに映ったのかもしれない。
同社には今年9月以降、海外富裕層から問い合わせが殺到。外国為替相場が1ドル=150円を突破した歴史的な円安も追い風となり、この半年で問い合わせ件数は2.5倍に増加した。
日本銀行が12月に突如、金融緩和の事実上の縮小を打ち出したことで、10月の水準に比べて20円近く円高に振れたものの、日本の不動産が海外富裕層にとって「お買い得」な状況に変わりはない。
中国、香港、台湾に加え、シンガポールやタイなど東南アジアの富裕層から、同社には年明け以降も都内の高級マンションの内覧予約が続々と入っているという。
彼らの「お目当て」は、都内の高級マンションだけではない。インバウンド解禁で、再び外国人観光客らが押し寄せる公算が大きいリゾート地は、特に引き合いが強い。
その代表がアジア屈指のスノーリゾート、北海道・ニセコだ。すでに海外の富裕層やデベロッパーが、ホテルコンドミニアムなどを次々と開発。21年まで4年連続で住宅地と商業地の地価上昇率が全国トップとなったが、今もなお上昇は続いている。
これに伴い局地的な“インフレ”まで生じている。ラーメンは1杯2000円、ランチ海鮮丼が5000円にまで値上がりするなど、地元住民が物価高騰に付いていけなくなった。その結果、不動産を売り払って北海道札幌市のタワーマンションに「逃避」するケースが後を絶たない。
いよいよ日本人が姿を消しつつあるニセコは、「外国人の、外国人による、外国人のための楽園」と化しているのだ。冒頭のタイからのご一行も、改めてニセコに足を運ぶ予定だという。
ニセコにおける不動産争奪戦が熾烈さを極める中、海外の富裕層やデベロッパーは、「第二のニセコ」となるエリアを探し始めている。
では、外国人の次なる「進駐先」はどこになるのか。次ページでは、海外の富裕層やデベロッパーが物色を始めている「第二のニセコ」エリアを紹介する。鍵を握るのは、スノーリゾート、不動産価格の安さ、そしてエリート教育の三つの条件だ。