「宇宙人って、もう地球にきているの?」「宇宙はどこから生まれたの?」
だれもがいちどは考えたことがある宇宙の謎に、スタンフォード大学卒の人気マンガ家とカリフォルニア大学教授の最強コンビが答える『この世で一番わかりやすい宇宙Q&A』(ジョージ・チャム、ダニエル・ホワイトソン著、水谷淳訳)が発売された。
本記事では、本書の疑問のひとつ『どうして宇宙人はまだ地球にやって来ていないの? それとももう来ているの?』の内容の一部を公開する。

宇宙人が「まだ地球にきていない」といえるわけPhoto: Adobe Stock

宇宙人は僕たちを探しにやって来ている?

 一つありえるのが、宇宙人は僕たちの声を聞いて、いまこっちに向かってきているっていうシナリオだ。

 すごく耳のいい宇宙人で、僕たちがうっかり宇宙空間にまき散らしているラジオやテレビの電波を捕まえているのかもしれない。そして僕たちのだじゃれや文化にはまって、すぐさま宇宙船を発進させ、しゃべっている僕たちのほうにまっすぐ向かってきているのかもしれない。

 物理的に言ってこのシナリオはどうなんだろう? 宇宙人が僕たちの電波を捕まえていることなんてありえるの? そして地球までたどり着けるだけの時間なんてあるの?

 一つ問題なのは、僕たちが電波信号を出してきた期間がそんなには長くないことだ。人類がラジオやテレビなどの電波をまき散らしはじめたのは、いまからだいたい100年前。渋滞でなかなか家にたどり着けない君にとっては、光の速さなんてものすごく速いだろうけれど、宇宙空間はとにかく広い。だから光の速さで伝わるメッセージでも、宇宙人の棲む惑星に届くまでには長い時間がかかる。

 しかもたとえ僕たちのメッセージを聞いても、地球にやって来るのにはまた長い時間がかかる。

宇宙船が光の速さの半分で飛行できるとしたら?

 彼らの宇宙旅行を物理学で考えてみよう。はじめに、彼らの宇宙船は光の速さの何分の一かで飛行できるとする(たとえば光の速さの半分、秒速約15 万km としよう)。

 そんな猛スピードまで加速するにはすごく時間がかかるって思うかもしれないけれど、驚くことに加速しないといけないのは旅のごく最初のうちだけだ。彼ら宇宙人の身体も僕たちと同じようにぐにゃぐにゃで、地球の重力の数倍以上の加速度を受けたらプリンみたいに潰れてしまうかもしれないけれど、それでも旅の大部分はトップスピードで飛行できる。

 たとえば2G(地球の重力加速度の2倍)っていうたいしたことない加速度でも、1年もかからずに光の速さの半分まで加速できるんだ。

 じゃあちょっと計算してみよう。僕たちが電波をまき散らしはじめたのはたったの100年くらい前だから、いまにも地球にたどり着けそうな宇宙人が棲んでいるのは地球から約33光年以内に限られる。僕たちの電波が光の速さでそこまで届くまでに33年、彼らが宇宙船(光の速さの半分で飛行できるとした)で地球までやって来るのにだいたい66年かかる。

 このシナリオによると、地球から33光年以上離れた宇宙人が地球にやって来る可能性はゼロ。僕たちのメッセージを受け取って地球まで旅しにくるだけの時間がないからだ。

地球から33光年以内なら?

 じゃあ地球から33光年以内に宇宙人は棲んでいるんだろうか?

 地球に一番近い恒星系(プロキシマ・ケンタウリ)は4光年とちょっとしか離れていない。そしてそこにはたまたま地球サイズの惑星がある。もしもその惑星に宇宙人が棲んでいて僕たちの信号を受け取っていたら、宇宙船に飛び乗って僕たちのところにやって来る時間はたっぷりある。

 じゃあどうしてやって来ないんだろう?

 実はこういう説がある。2010年に放映されたテレビドラマ『LOST』の最終回が、2014年に彼らの惑星に届くまで待っていたっていうんだ。だとすると、彼らが最終回にケチをつけにやって来るのは2022年っていうことになる。

 もっと遠くに目を向けたら? 33光年の範囲内には300個ちょっとの恒星系があって、そのうちの約20%には地球に似た惑星(大きさがだいたい同じで中心の恒星からちょうどいい距離にある惑星)が存在していそうだ。だから、僕たちが最初に流したラジオの電波を聞いて地球に代表団を送り込める、地球に似た惑星は、約65個っていうことになる。

 でも誰も来てくれない。どうしてだろう?

 もちろん、宇宙人が僕たちの信号を受け取ってもこっちにやって来ない理由はいくらでも考えられる。僕たちのおしゃべりが気に入らなかったのかもしれないし、興味がなかったのかもしれないし、相手にしなかったのかもしれない。

 でも、僕たちみたいにきっとひとりぼっちの知的文明が、お隣さんに会いに行くチャンスとか、少なくともじっくり聴いて返事を出すチャンスに飛びつかないなんてちょっと考えにくい。僕たちの電波信号を受け取って地球にやって来た知的な宇宙人がぜんぜんいないことを考えると、もっと当たり前の事実が当てはまるのかもしれない。

 地球からそんな近い距離には知的宇宙人文明は一つもないんだろう。高度な知的生命の数は、惑星65個中2個(僕たちともう1つ)よりも少ないのかもしれない。この説明が一番当たっていそうだ。

 地球の生命の歴史を振り返って、僕たちの文明がいつ消えてもおかしくなかったことを考えると、そもそも僕たちがここにこうして生きている確率も32.5分の1よりずっと小さいんじゃないの?