「宇宙人って、もう地球にきているの?」「宇宙はどこから生まれたの?」
だれもがいちどは考えたことがある宇宙の謎に、スタンフォード大学卒の人気マンガ家とカリフォルニア大学教授の最強コンビが答える『この世で一番わかりやすい宇宙Q&A』(ジョージ・チャム、ダニエル・ホワイトソン著、水谷淳訳)が発売された。
本記事では、本書の疑問のひとつ『どうしてテレポーテーションできないの?』の内容を全3回で公開する。

【宇宙のヒミツ】いつか、テレポーテーションできるようになる?(前編)Photo:Adobe Stock

いつか、テレポーテーションできるようになる?

 ここにいる次の瞬間にぜんぜん別の場所に行くのを夢見ているんだったら、残念だけれどそれは不可能だって即答できる。

 物理学では、瞬時に起こる出来事についてすごく厳しいルールがある。どんな出来事(結果)にも必ず原因がないといけなくて、それには情報が伝わらないといけないんだ。

 考えてみてほしい。2つの出来事が互いに因果関係でつながるためには(たとえば君がここから姿を消してどこか別の場所に出現するとか)、何かの方法で互いに話をつけないといけない。

 そしてこの宇宙では、情報も含めてどんなものにだって制限速度がある。

 情報も物体と同じように空間の中を伝わるしかなくて、この宇宙で一番速いスピードは光の速さだ。光の速さは“情報の速さ”とか“宇宙の制限速度”って呼んだほうがいいくらいだ。

 相対性理論と、物理学の大前提である因果関係には、その制限速度がしっかり刻み込まれている。重力ですら光よりも速く伝わることはできない。

 地球はちょうどいま太陽のある場所から重力を受けているわけじゃない。8分前に太陽のあった場所から重力を受けているんだ。

 太陽と地球のあいだの1億5000万kmを情報が伝わるのにはそれだけの時間がかかってしまう。もしも太陽が突然姿を消しても、地球は8分間ふつうに軌道を回ってからようやく太陽がなくなったのに気づくんだ。

 だから、君がある場所から姿を消して瞬間的に別の場所に現れるなんて、とうていお話にもならない。あいだに何か起こるしかないし、その何かは光より速くは伝われないんだ。

テレポーテーションの方法

 でも“テレポーテーション”っていう言葉の定義についてそこまで小うるさい人なんてそう多くないだろう。「ほぼ瞬間的に」とか、「まばたきしているあいだに」とか、「物理法則で許される限り最速に」とかでもかまわない人がほとんどじゃないの? 

 そうだとしたら、テレポーテーションを実現させる方法が2 つある。

1. 光の速さで君を転送する。
2. いま君のいる場所と行きたい場所のあいだの距離をなんとかして縮める。

 2つめの方法はいわゆる“ポータル”タイプのテレポーテーションだ。映画だと、扉を開くとワームホールか何か別次元の空間につながっていて、そこを通り抜けるとどこか別のところに行ける。ワームホールは遠く離れた地点どうしをつなぐ仮想上のトンネルだ。

 また物理学者は、僕たちの知っている3つの次元以外にも次元があるって考えている。

 残念なことにどっちもまだほとんど想像の産物でしかない。実際にワームホールなんて見たこともないし、ワームホールを開いたり行き先を好きに決めたりする方法なんて見当もつかない。別次元も人が入っていけるような場所じゃない。素粒子がのたうち回れる方向がいくつもあるっていうだけだ。

 1つめの方法のほうがずっとおもしろい話になる。実は近いうちに実現可能になるかもしれないんだ。中編に続く)