「宇宙人って、もう地球にきているの?」「宇宙はどこから生まれたの?」
だれもがいちどは考えたことがある宇宙の謎に、スタンフォード大学卒の人気マンガ家とカリフォルニア大学教授の最強コンビが答える『この世で一番わかりやすい宇宙Q&A』(ジョージ・チャム、ダニエル・ホワイトソン著、水谷淳訳)が発売された。
本記事では、本書の疑問のひとつ『もう一人の君がいるの?』の内容の一部を公開する。
君が君である確率は?
いまの君があるのは人生でどんな選択をしてきたからなのか、考えてみよう。
君はバナナをたくさん食べた(または食べなかった)。ある大事な友達と出会った(または出会わなかった)。あるとき家にいようと決めたから、果物を積んだ荷車に轢かれずに済んだ。宇宙のことが書いてあるこのくだらない本をなぜか見つけて、読むことに決めた。
45 億年前から始まったこれら全部の出来事のおかげで、いまここにこうして君がいるんだ。じゃあ、以上すべての出来事がもう一回まったく同じように起こってもう一人の君ができる確率は、いったいどのくらいなんだろう?
すごく低そうじゃないかい? 実はそんなことないんだ!
君の存在につながった確率を計算してみよう
君の存在につながった偶然の出来事や選択、タイミングを全部たどっていって、それぞれの確率を計算してみよう。
スタートは今日。朝、目が覚めてから君はいくつ選択をしただろう?
ベッドから起き上がろうと決めて、着る服を選んで、朝食に食べるものを選んだと思う。どれもちっぽけな選択だけれど、君の人生を変えるかもしれない。たとえば、バナナ柄のブラウスやネクタイを着けたかどうかで、未来の伴侶が君に気づくかどうか違ってくるかもしれない。
そこで、人生を変えるような選択を1分あたりだいたい1回か2回はやっているとしよう。
すごいプレッシャーだって思うかもしれないけれど、量子力学とカオス理論を信じるならもっとずっと多いはずだ。でもとりあえず1分あたり2回とすると、君は大事な選択を1日に数千回、1年間で約100万回もしていることになる。
20歳以上の人だったら、人生で2000万回以上の選択をしてきたおかげで君は今日ここにいるんだ。
人生の道のりは何通り?
次に、君がする選択はどれも、AかBか、バナナか桃かというように、2つの選択肢しかないと仮定しよう。実際にはもっとたくさんあるけれど(最近のランチメニューはどれだけたくさんあるか知ってるかい?)、シンプルに考えていこう。2000万回の選択のおかげで君がいまの君になった確率は、1/2を2000万回掛け合わせて、1/2の20,000,000乗となる。
どうして? 選択をするごとに組み合わせの数は増えていく。ベッドの左右どっちから下りるか、朝食にバナナと桃のどっちを食べるか、仕事に電車とバスのどっちで行くかを選ばないといけないとしたら、君にとって今日がどんな日になるかは2×2×2(=2の3乗)通りあることになる。
だから、ベッドの左側から下りてバナナを食べてバスに乗る確率は、2の3乗分の1、つまり1/8となる。人生で「AかBか」の選択を2000万回するとしたら、君の人生の道筋は2の20,000,000乗通りあることになる。
すごく大きい数だ。でもまだ序の口だ。
ご先祖さまの選択まで含めると?
さらに、君の両親がした選択によって君が生まれる確率も考え合わせないといけない。それを含めると選択の回数はさらに4000万回増える(お父さんとお母さんで2000万回ずつ)。4人のおじいさんとおばあさんを含めるとさらに8000万回増える。
ひいおじいさんとひいおばあさんを含めると? 1億6000万回増える。どうなっていくかわかるかい? 1世代さかのぼるごとにご先祖さまの人数が2倍になって、君に影響を与えたかもしれない選択の回数はさらに増えていく。
人類は少なくとも3万年前から存在していて、だいたい1500世代だ。彼らの選択を全部考え合わせると、さっきの数はますます大きくなる。ただしずっと昔にさかのぼると、ご先祖さまどうしが親戚で、家系図の中に同じ人が2回出てきたりするから、もう少し複雑になってくる。
でも説明するのが面倒くさいし、計算が難しくなってしまう。そこでややこしくならないように、君に影響を与えた人は1世代あたり2人だけだったとしよう。それでも選択の回数は、1500世代× 2人× 2000万回=600億回となる。君がたまたまここにいる確率は2の60,000,000,000乗分の1だ。
微生物だった時代まで含めると?
でもまだまだ終わらない。人類誕生以前の歴史と、ちっぽけな微生物にまでさかのぼる数十億年の進化も考えに入れてみよう。地球上の生命はいまから約35億年前に誕生した。そこまでさかのぼる家系図を作ったら、微生物と単純な植物でほとんど埋まってしまうだろう。
それらは意識的な選択はしなかったかもしれないけれど、どんな風が吹いたか、太陽が当たったか、雨が降ったかといった、いろんな偶然の出来事から影響を受けた。
君のご先祖さまである微生物は1日あたり少なくとも1回偶然の出来事から影響を受けて、その偶然の出来事はそれぞれ2通りの結果になる可能性があったとしよう(たとえば石が落ちてきたか、落ちてこなかったか)。すると選択の回数はさらに1兆回(1,000,000,000,000回)も増えてしまう。
続いて宇宙のこのあたりの様子を、太陽系が誕生した45億年前からさらに昔まで巻き戻していってみよう。君の身体を作る原子を含んでいたかつての恒星や惑星をたどっていって、140億年前のビッグバンにまでさかのぼるんだ。
当時、君の人生の道筋に影響を与えたかもしれない大事な出来事が、とてつもなく低く見積もって1日1回起こったとしよう。すると、今日までつながる選択の回数はだいたい1000兆回となって、君がここにいる確率は2の1,000,000,000,000,000乗分の1にまで小さくなる。