「飛び込み」「物売り」「足で稼ぐ」「ノルマ」「テレアポ」といった言葉を連想する「営業」。あらゆる職種の中でも人気が低く、労働生産性が低い営業は大きく変わろうとしている。『NEW SALES 新時代の営業に必要な7つの原則』では、7つの新しい営業メソッドを駆使して、古い営業スタイルを大きく変える「NEW SALES」について、具体例を交えて解説している。最先端のテクノロジー企業が「できる営業」に多額の報酬を払い、企業の成長エンジンに「営業」を据えて躍進するようになった現代に必須の一冊だ。本稿では、本書より一部を抜粋・編集して、「NEW SALES」とは何かについて紹介していく。(構成:長沼良和)

NEW SALESPhoto: Adobe Stock

新人を効率的に戦力にする「シェア営業」

 営業力を手にするには「できる上司の背中を見て学べ」と言われてきたものだ。

 何年も時間をかけて上司について、言動を真似て盗んで自分のものにすることがよしとされてきた。

 しかし近年、技術の進歩によってビジネス環境が激しく変化するようになり、そんな悠長な学び方をしていては時代の速度に追いつけなくなった。

 今の新人営業は、的確かつ効率的にエッセンスを学び、1日でも早く戦力にならなければならないのだ。

大切なのは、目まぐるしく変わる商品・サービスの情報や知識をいち早く取り入れ、営業チームで共有していくこと。速く情報を共有できなければ、営業チームが生き残ることはできません。(P.133)

 そのために必要なのが「シェア営業」である。

「ナレッジ」で営業チームを底上げ

「シェア営業」とは「営業チームでナレッジを共有すること」だ。ここでいう「ナレッジ」とは、営業資料やノウハウのことを指す。

 営業担当者をイチから育てるには、時間もかかるし手間もかかる。

 ところが、顧客へ提示する営業資料を共有すれば、営業をはじめたばかりの新人担当者でも、すぐに結果を出せる確率があがる。

 最初はぎこちない話し方かもしれない。しかし、資料だけでもしっかりしていれば、顧客に商品・サービスの良さが伝わる可能性はグッと高まるはずだ。

 現場で活かせるナレッジを一刻も早く共有することで、経験の少ない営業担当者にも再現性のある営業力を身につけさせることができる。

「シェア営業」とは、それまで属人的に取り組まれてきた営業活動から脱し、資料やノウハウを共有することで、再現性の高いチームへと変革していくことです。(P.136-137)

営業資料を充実させて経験の浅さをカバー

「シェア営業」で必要とされる営業ナレッジには2種類ある。

「営業コンテンツ」「営業ノウハウ」だ。

「営業コンテンツ」とは、顧客向けの資料や動画を指す。

 最近では動画を使いながらプレゼンテーションを行うことで、より具体的に詳細を伝えるケースも増えてきた。

 こういった資料を共有するだけで、営業チーム全員で有利な商談が可能になる。

考えてみてください。経験の浅い営業担当者が自分で作成した資料を使ってたどたどしく商品やサービスを説明しても、顧客の心は動きません。(P.137)

 仮に営業担当者の経験の長さや資質に多少の差があったとしても、商品やサービスを的確に説明する資料や動画を用意するだけで顧客には伝わりやすくなる。

チーム全体を強くする「営業ノウハウ」

 もうひとつの「営業ノウハウ」は、社内向けの資料を指している。つまり、社内研修のための資料をつくるということだ。

具体的には、コンテンツに紐付いたトークスクリプトやプレゼン動画、社内勉強会動画、個社別提案書と、営業プロセスを進めるために必要な営業ハンドブック、商談動画、顧客対応シート、顧客社内関係図フォーマットなどが必要です。(P.143-145)

 同じ顧客向けの「営業コンテンツ」を使ったとしても、担当者によって営業成績にばらつきが出る。

 チームとしてはばらつきをなくし、全体的に底上げすることに注力したいところだ。

 そのためにも、社内で「営業ノウハウ」を体系的に学び共有できる施策が重要になる。

営業担当者が自分のスキルを磨けるよう、模擬商談の動画や顧客からよく受ける質問をまとめてチーム内で共有しましょう。(P.139)

「シェア営業」の第一歩

「シェア営業」を実践する最初の一歩は、営業チームのメンバーが個々に持っているナレッジを共有すること。

 社内にある営業ナレッジの6割が共有されていないという調査もあるそうだ。

 すなわち、各営業担当者が属人的に自分で培ったナレッジを使って商談をしているのである。

 各々のナレッジを共有すれば、チーム全員が優れた結果を出せる営業担当者になれる可能性があるというのに、バラバラになっているため営業ナレッジが生かしきれていない状況なのだ。

企業にとって重要な資産である営業ナレッジを商談で活用できていないなら、それほどもったいないことはありません。
だからこそ、リーダーはまず社内に眠る営業ナレッジの棚卸しをすることから始めましょう。(P.140-141)

 社内にあるナレッジを共有するだけで、他社から一歩も二歩も抜きん出ることができる。

「営業ナレッジ」共有の3つのコツ

 とはいえ、闇雲に「営業ナレッジ」を共有すればいいというわけではない。共有する際には「集約性」「更新性」「利便性」の3つのコツを意識しよう。

「集約性」とは、「営業ナレッジを1ヵ所に集約して共有する」ことだ。営業チームで共有するポータルサイトやグループウェアを活用しよう。

「更新性」は、「営業ナレッジを最新のものに更新する」こと。ナレッジを集約しただけでは常に変化する顧客のニーズを追いきれなくなる。

 そのため、常に最新の情報に更新されている状態を維持しなければならない。

「利便性」は、「営業ナレッジを素早く発見し、適切に活躍する」こと。

 営業用ポータルサイトを用意して、営業シーンで獲得したナレッジを整理して格納しておいて、チーム全員でいつでもすぐに見られるようにしておく。

 これら3つの要素を意識することで、営業ナレッジをより正確かつ確実に共有できる。

 営業チームのメンバー全員が「売れる営業」に進化できるので、ぜひ試して欲しい。