「飛び込み」「物売り」「足で稼ぐ」「ノルマ」「テレアポ」といった言葉を連想する「営業」。あらゆる職種の中でも人気が低く、労働生産性が低い営業は大きく変わろうとしている。『NEW SALES 新時代の営業に必要な7つの原則』では、7つの新しい営業メソッドを駆使して、古い営業スタイルを大きく変える「NEW SALES」について、具体例を交えて解説している。最先端のテクノロジー企業が「できる営業」に多額の報酬を払い、企業の成長エンジンに「営業」を据えて躍進するようになった現代に必須の一冊だ。本稿では、本書より一部を抜粋・編集して、「NEW SALES」とは何かについて紹介していく。(構成:長沼良和)

NEW SALESPhoto: Adobe Stock

あまり良い印象のない「営業」

 かつてはやりたくない仕事の代表格だった「営業」が変わりつつある。

訪問営業」「飛び込み営業」「テレアポ営業」「押し売り」など、あまり良い印象のないのが営業であった。

 何度も断られながら気合いと根性で電話をかけて訪問数をこなし、その中から見込み客を見つけて受注につなげる。

 気の遠くなるような嫌な仕事。それが営業の一般的なイメージである。

 令和の現在でも、そのイメージは拭いきれていないようだ。

就職サイト「マイナビ」の調査では、大学生のおよそ9割が「営業をやりたくない」と回答しています。(P.15)

 今も昔も営業という言葉に良い印象がないのだ。

躍進する新しい営業スタイルの企業

 ところが、一部の最先端テクノロジー企業では、人気の職種であるITエンジニアと同列に営業をあつかっている。そして同時にものすごい成果を出している。

 たとえば、「キーエンス」だ。

 日本で社員の平均年収が高いと名高い企業である。2021年の年収ランキングでは堂々の1位を獲得。2022年6月に提出された有価証券報告書によるとその平均年収額は2000万円を優に超える。

 キーエンスはこれまでの営業方法では成果が出ないことをいち早く自覚し、新しい営業スタイルに移行したことにより大きな成果を出した好例である。

ITに仕事を奪われつつある営業

 実際のところ、営業職の労働力人口は減少傾向にある。その理由はこれまでの営業スタイルがITに取って代わられるようになってきたからだ。

 しかし、その潮流に気づいていない企業はまだまだ多い。

 そんななかで「放っておいたら職を失う可能性がある」と警鐘を鳴らすのが『NEW SALES』の著者・麻野耕司氏だ。

「OLD SALES」と「NEW SALES」

 本書では、「売り込み」や「足で稼ぐ」といった言葉に代表されるこれまでの営業法を「OLD SALES」と呼ぶ。一方、これからの営業を「NEW SALES」と名付けている。

誰もがいち早く「OLD SALES」から抜け出し、「NEW SALES」に進化しなくては、時代に置き去りにされてしまう。(P.16)

 現状では、「NEW SALES」の大切さに気づいた一部の企業が実践して大きな成果を出している。

「労働力人口」の10%以上が営業

 本来、営業は企業活動の根幹とも言える部分。

 商品を「売る」ことができなければ、売り上げも立たず、経営は成り立たない。

 営業が優れた結果を出して、売り上げを伸ばせれば、商品開発やマーケティングなどの他の部門にも投資できてよりダイナミックかつ効率的な展開ができて好循環が生まれる。

労働力人口の10%以上を占める営業という仕事が変わることは、企業全体に莫大なメリットを与え、ひいてはそれが日本経済の成長にも大きく寄与するに違いありません。(P.16-P.18)

世界と比べて営業生産性の低い日本

 そもそも日本企業では、昔から諸外国に比べて営業の生産性が低いと言われている。

 業種別に見ても、営業ROI(投資利益率)はグローバル全体の平均値より軒並み低くなっている。

「労働は美徳」という大義名分のもと、長時間労働をして残業することが良いこととみなされてきた。

 逆に、効率を上げて最大の効果を最小の時間で仕事をするのは、軽視されてきたのである。

 本書では、この理由を「OLD SALES」に留まっているから、労働生産性や仕事の満足度も低いままになっているのが原因だと言っている。

 ここで「NEW SALES」にシフトできれば、営業が効率的に結果をさせるようになるため、生産性の低さだけでなくいろいろな問題が改善していく。

「OLD SALES」から「NEW SALES」へ生まれ変わることができれば、企業や個人の様々な課題が解決できます。
企業におけるビジネスの成長にも、個人におけるキャリアの成功にも、「NEW SALES」は大きな変革をもたらします。(P.18)

営業はいらなくなるのか?

 「今後はITが進化し、営業がいらなくなる」などと言われるようになってきた。

「インターネットで様々な情報を入手でき、テクノロジーで多様な業務ができるこれからの時代に、営業という仕事は不要である」
数年来、こうした
「営業不要論」がまことしやかに囁かれています。(P.19)

 この意見に対し、著者は半分正解で半分不正解だと考えている。

 これまでの営業では、商品説明をする役割を担ってきた。

 ところが、ネットの発達によって商品やサービスに関する情報は誰でも見られるようになってきた。

 そのため既存の営業はいらなくなるという意見は正解といえる。

 つまり、これまでの営業スタイルをいまだに続けているのなら、営業は不要だということだ。

さらに必要とされる「NEW SALES」

 しかし、これから本当に必要とされる「NEW SALES」という営業を駆使できる企業は、今後もますます必要とされ、引き続き成果を出し続けることになる。

 「NEW SALES」とは、スポーツジムのパーソナルトレーナーのように、顧客のそばに寄り添ってサポートし、応援し続ける存在になることだ。

顧客の志向や意思に合わせて商品やサービスを提案し、そこに向けた動機付けまでサポートするのが「NEW SALES」の仕事なのです。(P.21)

 これから営業という仕事は、顧客を応援して目標達成に寄り添うことが重要になるのである。