資産運用写真はイメージです Photo:PIXTA

世の中にはさまざまな金融商品や金融サービスがあります。使い勝手がよく便利なものもある一方、問題が多くあちこちでトラブルを引き起こしているものもあります。そのトラブルの原因は何でしょうか? また、シニア世代が手を出してはいけない金融商品や金融サービスとはどういうものでしょうか?

※本稿は、西崎 努『60歳を過ぎたらやってはいけない資産運用』(アスコム)の一部を抜粋・編集したものです。

「資産形成」と「資産運用の違い」

 現在、世の中にはさまざまな金融商品・金融サービスがあります。20年前はもちろん、10年前と比べてもそのバリエーションは大幅に増えました。中にはとても使い勝手がよく、便利なものもあります。しかしその一方で、非常に問題が多く、あちこちでトラブルを引き起こしているものもあります。

 もちろん、銀行や証券など金融機関が扱っている商品・サービスは、法律の規制の範囲内で作られ、販売されているものです。怪しげな投資話とは違います。その点ははっきりさせておかなければなりません。

 問題は、投資家の目的や状況にまったく合っていない商品やサービスが金融機関からすすめられ、投資家もそれを購入してしまっていることです。投資家の目的や資金の性質などによって、適切な商品・サービスは異なります。Aさんにはピッタリな商品・サービスが、Bさんにとってはまったく不要で、むしろデメリットでしかないということも当然あります。

 若い世代とシニア世代の違いはその典型です。

 若い世代は多くの場合、まとまった資産はまだないけれど、これから収入も増えていくし、20年、30年かけて「資産形成」をしていこうと考えています。そのためには多少リスク(株式など投資資産の価格変動)をとりつつ、長期での資産形成に向いた商品を利用します。具体的には株式投資や、株式への投資を中心とした投資信託です。積立投資なら低コストのインデックス投信を利用することが望ましいでしょう。

 一方、シニア世代は現役をリタイアし、これまでの貯蓄や退職金などのまとまった資産でゆとりある生活を楽しみながら、介護や病気などの万が一にも備えたいと考えています。そんなシニア世代にとっては、積極的に資産を増やすことよりも、安定運用が大事です。安定運用とは、高いリターンや大幅な値上がり益を追求するのではなく、リスクをできるだけ抑えようとする運用です。

 そのため、基本的には債券投資を中心とした資産配分を心掛け、運用資金の現金化も想定しつつ運用することが求められます。さらに、シニア世代は年齢のことも考慮してできるだけ「シンプルな投資」を心掛け、「管理しやすい状況」にしておくことも大切です。

 それなのに、シニア世代が若い世代向けの商品やサービスに手を出したり、投資資産の配分を間違えたりしているケースが多々あります。「資産形成」と「資産運用」の違いをよく認識しておかなければなりません。

NISAやiDeCoをやったほうがいいのか?

 ところで、シニア世代のみなさんからは「テレビや雑誌でよく聞くNISA(少額投資非課税制度)やiDeCo(個人型確定拠出年金)を自分たちもやったほうがいいのか」という相談もよく受けます。

 結論からいうと、無理にやる必要はないと思います。投資の経済的効果からすると利用するメリットはあります。しかし資産管理の側面から見ると、そのメリットが本当に必要かは疑問です。保有資産の金額が大きいと、NISAやiDeCoの投資金額では資産全体への影響が少なく、管理の手間が増えることのデメリットのほうが大きい場合もあります。

 例えば、NISAには次の2つがあります。(2022年11月現在、ジュニアNISAは除く)

(1)一般NISA……株式・投資信託等を年間120万円まで購入でき最大5年間非課税で保有
(2)つみたてNISA……投資信託等を年間40万円まで購入でき最大20年間非課税で保有

 ただし、「つみたてNISA」で投資できるのは、金融庁から指定された投資信託とETF、216本(2022年10月末時点)に限られます。

 そもそもNISAもiDeCoも税制上の優遇を受けながら長期にわたって資産形成する若い世代に向けた制度です。シニア世代にとって大事なのは長期にわたっての資産形成ではなく、まとまった資金を安定して運用することであり、別の視点で考えたほうがいいと思います。

 利用する場合は、NISAで損失が出ても他の投資との損益通算の対象外となることや、少額での投資でも手間と感じずに対応できるかがポイントになります。