そのため、基本的には債券投資を中心とした資産配分を心掛け、運用資金の現金化も想定しつつ運用することが求められます。さらに、シニア世代は年齢のことも考慮してできるだけ「シンプルな投資」を心掛け、「管理しやすい状況」にしておくことも大切です。

 それなのに、シニア世代が若い世代向けの商品やサービスに手を出したり、投資資産の配分を間違えたりしているケースが多々あります。「資産形成」と「資産運用」の違いをよく認識しておかなければなりません。

NISAやiDeCoをやったほうがいいのか?

 ところで、シニア世代のみなさんからは「テレビや雑誌でよく聞くNISA(少額投資非課税制度)やiDeCo(個人型確定拠出年金)を自分たちもやったほうがいいのか」という相談もよく受けます。

 結論からいうと、無理にやる必要はないと思います。投資の経済的効果からすると利用するメリットはあります。しかし資産管理の側面から見ると、そのメリットが本当に必要かは疑問です。保有資産の金額が大きいと、NISAやiDeCoの投資金額では資産全体への影響が少なく、管理の手間が増えることのデメリットのほうが大きい場合もあります。

 例えば、NISAには次の2つがあります。(2022年11月現在、ジュニアNISAは除く)

(1)一般NISA……株式・投資信託等を年間120万円まで購入でき最大5年間非課税で保有
(2)つみたてNISA……投資信託等を年間40万円まで購入でき最大20年間非課税で保有

 ただし、「つみたてNISA」で投資できるのは、金融庁から指定された投資信託とETF、216本(2022年10月末時点)に限られます。

 そもそもNISAもiDeCoも税制上の優遇を受けながら長期にわたって資産形成する若い世代に向けた制度です。シニア世代にとって大事なのは長期にわたっての資産形成ではなく、まとまった資金を安定して運用することであり、別の視点で考えたほうがいいと思います。

 利用する場合は、NISAで損失が出ても他の投資との損益通算の対象外となることや、少額での投資でも手間と感じずに対応できるかがポイントになります。