「あなただから」が部下の欲求を満たす

 心理学者エイブラハム・マズローによる「欲求五段階論」を聞かれたことがあると思います。マズローは、人間の欲求は5段階の階層をなしていると説明しています。

 下から順に見ていくと、

1、生理欲求……食べたい、飲みたい、眠りたいといった最も基本的な欲求
2、安全欲求……自分の生命や財産などを安全で安定した状態に置きたいという欲求
3、社会(帰属)欲求……仲間に入れてもらいたい、愛されたいという欲求
4、承認欲求……他人から尊敬されたい、自分を価値ある存在だと認められたいという欲求
5、自己実現欲求……自分の持って生まれた能力を最大限に伸ばし、発揮したいという欲求

 というもので、上位の欲求は下位の欲求がある程度満たされて初めて呼び起こされるものとされています。

 皆さんの部下は会社に勤めて職を持っていることから、「生理欲求」「安全欲求」は満たされていると考えられます。そこで次の段階で生じるのが「社会(帰属)欲求」、そして「承認欲求」です。会社の中でこれらが満たされることで、部下は充足感を得られると考えられます。

「社会(帰属)欲求」は、部下が組織の目的を理解・共感し、その目的に向かうチームの一員であると感じることによって、満たすことができます。

 昨今、クラウドファンディングなどを通じて寄付をし、自分が共感する活動を応援する行動が盛んです。これはクラウドファンディングを通じて「自分が素晴らしい組織や活動に帰属し、一緒に貢献できている」と感じられるからだと言えるでしょう。

「承認欲求」は、組織の中での自分の役割を理解・納得し、上司や同僚、お客様などからのフィードバックから「自分だからこの役割を担っている」と感じることで満たされます。「自分だからこそ」の役割を持つということは、そのまま自分の尊厳が認められている実感につながるのです。