上司の皆さんの中には、「組織の足並みが揃わない」「チームとして一つにまとまらない」と悩んでいる人もいるでしょう。かつてスタンダードだった「日本型組織」、つまり男性正社員中心の組織から、現代は年齢や性別、国籍や文化の違い、育児や介護の有無、雇用形態の違いなど、異なる立場や価値観を持つメンバーで構成される職場に変化しています。共に認め合い活躍できる組織を「意識的」につくっていく必要があるのです。そのためには、チームで部下それぞれの持ち味が活きる役割を明確にし、互いに協力し合える環境をつくることが重要です。
※本記事は前川孝雄『部下全員が活躍する上司力5つのステップ』から抜粋・再編集したものです。
小さな力を合わせて「おおきなかぶ」を抜く醍醐味
私は、組織のあり方を説明するとき、いつも『おおきなかぶ』という絵本を紹介します。この絵本では、おじいさん、おばあさん、孫娘が次々に登場し、全員が大きなかぶを抜こうと試みますが、なかなか抜けません。犬が手伝っても、猫が手伝っても抜けずにいたところ、最後にネズミが出てきて全員が力を合わせたら見事に抜けた……というお話です。
絵本に登場するのが、おじいさん、おばあさんからネズミまで、力の弱い人や動物ばかりなのがミソです。一人ひとりの力は弱くても、みんなが力を合わせることで「おおきなかぶ」が抜けることをこの絵本は伝えています。これこそ、チームで働くことの醍醐味を表しています。
経営学者ピーター・F・ドラッカーは、「組織とは、平凡をして非凡なさしめるもの」と言っています。会社組織は飛び抜けたスーパーマンはいないもので、基本的に「普通の人たち」で構成されています。その「普通の人たち」が共通の目的のために協力することで、非凡な成果を上げることが可能になります。そして、非凡な成果を上げられるようにチームをまとめるのが、上司力なのです。