上司と部下写真はイメージです Photo:PIXTA

部下との信頼関係づくりで留意したいのが、「心理的安全性」です。部下が力を発揮して働くためには、職場が安心・安全な場所であることが重要です。「本音や弱みを見せても非難されず、上司やメンバーに受け入れられている」と感じられることが大切だからです。そのためには、上司が率先して自己開示し合える場をつくり、相互に自分の気持ちや考えを伝え合うステップを踏みましょう。ただし、部下のプライバシーへの過渡な踏み込みは控え、自らオープンに語りつつ、部下の自然な自己開示に耳を傾けましょう。
※本記事は前川孝雄『部下全員が活躍する上司力5つのステップ』から抜粋・再編集したものです。

話しすぎに注意し、話を待つ姿勢で

 心理的安全性の醸成は、相互理解のための面談を数回行ったからといって、すぐにはできません。上司が意識的に、日々の仕事や対話を通して部下と喜怒哀楽を共にする機会を重ね、お互いの理解が深まり信頼関係がつくられる過程で、徐々に進むものです。

 上司は、部下との距離を縮めようとする際、注意が必要です。仕事熱心で優秀な上司ほど、部下との面談や会話の際に、「しっかりと話を深めよう」「できるだけ分かり合おう」と考えがちです。しかし、前のめりで対話を始めると、上司が一方的に部下に話し続ける演説状態になってしまう傾向があります。部下への傾聴のための面談であったはずが、「部下が黙り込むので、つい焦って自分ばかりが話してしまった」と語る上司は多いものです。

 上司も、まだ十分に心情が通い合わない部下との対話で沈黙が続くと不安になり、沈黙を解消しようと焦り、自分ばかりが語ってしまうのです。しかしこれは逆効果で、部下にすれば上司への遠慮から、さらに話を切り出しにくくなります。

 そこで、「沈黙もコミュニケーション」と捉えることです。部下が黙り込んでも焦らず、「考えを整理してから、ゆっくり話してくれればいいよ」と伝え、部下が話すことを待ちましょう。相手を待つことのできる包容力や、相手のペースに合わせられる余裕が、信頼関係づくりには欠かせません。ただでさえ上司は職場で優越的な立場にありますから、部下から本音を引き出すのはとても難しいことと心得ましょう。