会社員や公務員の人は60歳、65歳、70歳と「収入ダウンの崖」が何度も訪れる。では、その中でも、老後に家計破綻する人が越えられない「お金の壁」にぶち当たるのは何歳のときなのか。ファイナンシャルプランナー(FP)として数々の家計の相談に乗ってきた筆者の経験則をお伝えしたい。(ファイナンシャルプランナー〈CFP〉、生活設計塾クルー取締役 深田晶恵)
健康面での「老後の壁」は80歳
では経済面での「壁」は何歳?
精神科医の和田秀樹先生のベストセラー書籍『80歳の壁』では、80歳を目前に寝たきりや要介護になる人が多いとある。本書では高く厚い「80歳の壁」を超えるためのたくさんのヒントが書かれている。
読み終わって、ファイナンシャルプランナー(FP)としては「“老後のお金の壁”は何歳だろう」と考えた。会社員、公務員は定年以降、次のような収入が大きく変化するタイミングが何度かある。
◆60歳で定年
定年以降働かないと、65歳から始まる年金受給までの間の収入が確保できない。そのため再雇用で働くことになるが、大多数の人が定年前より収入が激減する。最初の「収入ダウンの崖」に直面する。
◆65歳から年金生活に入る
65歳で再雇用契約が終了して仕事を完全リタイアするなら、年金収入だけの生活がスタート。年金収入は再雇用時の給与収入より少ない。これが2回目の「収入ダウンの崖」となる。
◆70歳または75歳で企業年金が終了
勤務先によるが、60歳または65歳から企業年金を受け取れる人もいる。しかし、企業年金を終身で支給する会社はごくわずかで、多くは70歳、75歳で終了する。企業年金がなくなると、再度収入はダウンする。人によっては「3回目の収入ダウンの崖」がある。
◆時期は予想できないが、配偶者の死亡で世帯の年金収入が減る
夫婦の場合、2人分の年金収入で暮らしていくが、配偶者と死別すると、1人分の年金になるので、世帯収入がダウンする。
私が考える「老後のお金の壁」とは、老後の安心を得られるかどうかを左右する重要な時期のこと。その壁に直面したとき、自分のお金に向き合わないと「老後貧乏」になる可能性がある。
さて、みなさんは「老後のお金の壁」は何歳だと思うだろうか。60歳か、65歳か、それとも70歳や75歳なのか。
私はこれまでのFP相談の経験から「60歳」直後が最も重要だと考える。今回はその理由をお伝えしよう。