株式投資をする人にぜひ読んで欲しい1冊が『株トレ――世界一楽しい「一問一答」株の教科書』だ。クイズを解きながら「株のトレードで勝つ技術」を身につける画期的な1冊だ。著者は、ファンドマネジャー歴25年、2000億円超を運用してTOPIXを大幅に上回る好実績をあげたスペシャリストの楽天証券・窪田真之氏。何万回にも及ぶ膨大な数のトレードから確立した「トレードで勝つ技術」を1冊に凝縮した本書から、特別に一部を抜粋して紹介する。

株式投資で失敗する人に共通する「たった1つの考え方のクセ」Photo: Adobe Stock

小型成長株で大失敗

 よく株で大成功した話をする人がいます。私もいろいろ上手く売買した話をしたくなることがあります。

 ただ、本当に役立つのは大成功した話より大失敗した話です。

 大失敗を無くすことが、長期的な資産形成に重要だからです。ここでは私の大失敗の実例をお話しします。

 私はファンドマネジャー時代、保有している小型成長株が急落したら、理由を考える前に問答無用の売りを出していました。

 理由は後からわかることが多く、わかってから売っていたのでは遅すぎるからです。

 すばやく売ることを徹底していたことが、長期的な好パフォーマンス維持に重要でした。

 ところが、そんな私が小型成長株で大失敗したことがあります。それは2000年に投資した昭文社HD(9475)です。半値以下になるまで保有を続けてしまいました。

株式投資で失敗する人に共通する「たった1つの考え方のクセ」『株トレ』より抜粋

「この株は大きく成長する」という先入観が損切りを阻む

 なぜ私はずるずる値下がりが続く昭文社株をすぐ売らなかったか、昭文社が将来大きく成長すると確信していたことが敗因です。

 思い込みが激しく、間違いに気づくのが遅れました。

 小型成長株に投資する時、私はなるべく実際に取材して企業内容をよく理解してから投資することにしていました。

 当時は、年間200社あまりの企業を取材して投資先を選んでいました。昭文社もそうして実際に取材して選んだ銘柄です。

 昭文社は2000年当時、出版事業をメインとしていましたが、新規に電子地図事業を始めて成長させる意欲を持っていました。

 出版事業は将来的に縮小していくが、代わって電子地図事業が急成長すると期待されていました。私は昭文社を取材し、電子地図事業の成長を確信しました。

 ①電子地図の需要急増はほぼ確実、②当時きちんとした電子地図を作れるのはゼンリン・昭文社の2社だけ、③全国に調査員を置いて最新情報をきめ細かに書き込んでいるのもゼンリン・昭文社だけだったからです。

 ところが昭文社はその後、わずかな黒字か赤字を繰り返す構造不振企業となってしまいました。出版事業の縮小が続く中、電子地図で稼ぐことができませんでした。

 ネット上で無料の電子地図がいくらでも利用できる時代となったためです。最も重要な収益源と期待されたカーナビ向けはゼンリンに取られました。

 ここから得られる教訓ですが、どんな事情があろうと急落する小型株はいったん売り、頭を冷やしてから考え直すということです。

 企業内容をきちんと調べることが重要であるのは言うまでもありませんが、それでも、企業の未来を正確に予想することはできません。

(本稿は、『株トレ――世界一楽しい「一問一答」株の教科書』から抜粋・編集したものです。)