日本の医療制度に“タダ乗り”?

 福岡県で事務所を開設する社会保険労務士・行政書士のK氏は、経営・管理ビザについて次のように語っている。

「経営・管理ビザは、簡単に言えば日本で社長になれるというビザで、就労ビザとは違って労働が要件となっていないビザです。また表向きには日本で何日間滞在しなければならないという日数の縛りがはっきり示されていないので、意図がある申請者は、『病気の時だけ日本に来ることもできるのではないか』と悪知恵を働かせる可能性があります。また、当人の役員報酬により保険料が決まるため、納付する保険料を月額数千円程度と最低限の金額にすることも不可能ではありません」(*筆者注:入管は「滞在日数について具体的な数字を示してはいないが、そもそも一定期間日本に在留しないのなら在留ビザの必要性はない」としている)

 また日本には、医療費の家計負担が重くならないよう、医療費が一定額を超えた場合、公的医療保険に加入している人を対象に、その超えた額を支給する「高額療養費制度」がある。中国では高度な医療にアクセスしにくい事情からすると、今後中国人の間で、最高の医療を安価に受けることができる公的医療保険への関心がさらに高まる可能性がある。

 冒頭で紹介したHさんからは、その後、次のようなメッセージが送られてきた。

「私の母は決められた国民健康保険料を生涯ずっと払ってきていますが、途中から日本に住んで、低い負担割合でこれだけの医療を受けようという外国人がいるとすれば、それは“タダ乗り”にも見えてしまいます。ただでさえ制度崩壊の危機にある健康保険制度ですが、次世代に残された人たちは背負いきれるのでしょうか」

 日本の公的医療保険は加入者が安心して医療にかかれるように、普段からお金を出し合って互いに支え合う制度だ。私たちは国民の義務として被用者保険や国民健康保険を含む公的な医療保険に加入しなければならないが、Hさんは、経営・管理ビザを取得する外国人が増えれば、公平であるべき給付と負担がアンバランスになりはしないかと心配をしているのだ。