部下は上司を選べない。このことを「上司ガチャ」と呼ぶ人もいます。
良い上司に当たるか、悪い上司に当たるかは運次第。
ハズレを引いてしまったら最悪、上司と部下、どちらかが異動するか、あるいはどちらかが転職するかしない限り、ハズレの関係は続いてしまいます。それだけは何とか避けたいところですが…。
一方、良い上司が「アタリ」なのかと言えば、100%そうだとも言い切れません。
なぜなら、良い上司もいつか離れるときがくるからです。
そこで、30代で経営者歴10年以上、『20代が仕事で大切にしたいこと』著者の飯塚勇太氏に、「上司ガチャ」に振り回されない方法について伺いました。
(編集/和田史子)

「上司ガチャ」で振り回されない方法Photo: Adobe Stock

「部下は上司を選べない」という事実

「上司ガチャ」という言葉が広く使われるようになりました。
部下は上司を選べない。優秀な上司につくことができるか、無能な上司につくことになってしまうかは運次第……このような状況を、どんな景品が当たるかわからない「ガチャ」にたとえて使われる言葉です。

確かに、優秀な上司も無能な上司もいます。
そして、どの上司のもとで働くことになるかは、運の要素にも大きく左右されます

ただ、どんなに無能な上司のもとで働くことになっても、それは「自分が最高のパフォーマンスを発揮できないこと」の言い訳にはなり得ない。私はそう考えています。

上司ガチャに振り回されないためにも、上司に依存しないPhoto: Adobe Stock


上司も人間です。「完璧な上司」などこの世に存在しません。
自分の親が完璧でないように、上司もまた、完璧ではありません。
上司に完璧さを求めてしまうと、「こんなはずではなかった!」と期待を裏切られた気分になり、自分で自分を苦しめてしまいます。上司に期待しすぎない。これはストレスフリーで働くコツでもあります。

そして、上司は常に入れ替わる可能性があります
どんなに素晴らしい上司も、どんなにダメな上司も、いつか離れる日が来ます。
上司が年上であれば、自分より先に会社を辞める可能性も高いでしょう。
逆に、自分が昇進や異動になって、上司から離れることもありますし、転職や独立で会社を辞めることもあるでしょう。

いつかはいなくなる人に、自分のパフォーマンスを左右され、同時に周りからの評価も左右されてしまうのは、とてももったいないことだと思うのです。

「良い上司」にも「悪い上司」にも振り回されずに仕事をする。そのほうが「自然」なのです。

上司を「デスクトップアイコン」だと思う

今すぐ、上司に依存するのはやめましょう
いっそ上司という存在をデスクトップアイコンのように思ってしまえばいい。必要なときだけダブルクリックして「自分の成果のために利用するもの」くらいの感覚で考え、「上司がいようがいまいが関係ない」と、淡々と自分のパフォーマンスを発揮することに集中するのです。他人に振り回されない働き方をするのは、心の健康を保つためにも重要です。

上司という存在をデスクトップアイコンのように思えばいいPhoto: Adobe Stock

上司が部下の性格に合わせてマネジメントするように、部下の側にも「上司をどうマネジメントするか」という視点が求められます。私はこれを、「ボスマネジメント(ボスマネ)」と呼んでいます。
小さなことですが、ボスマネの視点を持つだけで、成果の出方や仕事のやりやすさは大きく変わってきます。

人にはそれぞれ癖がありますし、長所も短所も人それぞれです。どっちもあるのが人間であれば、長所だけを使わせていただく。これも立派なボスマネです。

ボスマネは、自分のやりたいことを、最小の努力で、最短の時間で叶えるためにとても有効です。若手社員にとっては、上司の力を借りることが、成果を出す近道になるからです。

ボスマネで上司を動かす

自分の意見を通すには、地ならしが必要です。
相談してほしい系の上司には、
「こんなことをやりたいと思っているのですが、どう思われますか。アドバイスをいただきたいのですが」
早い段階で相談します。

売上主義の上司には
「これだけの売上増が見込めます」
数字のシミュレーションを見せながら事前説明をする。

新しいことに二の足を踏む保守系上司には、
「かつて部で似たようなケースがあり、成果も出ています」
前例を示しながら話をする

このように、上司の系統に合わせて、事前に話をつけておくことが「ボスマネ」なのです。

時間をかけて練り上げた提案を、提出する直前で上司に「待った!」と言われるなんて無駄の極みです。
上司に振り回される時間がもったいない。
だからこそ、毎日、地道にボスマネをして、上司と良好な関係を築いていきましょう。

(飯塚勇太著『20代が仕事で大切にしたいこと』から一部を抜粋・改変しています)

飯塚勇太(いいづか・ゆうた)
株式会社サイバーエージェント専務執行役員
1990年神奈川県生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業。
2011年、サイバーエージェントの内定者時代に、友人らと開発・運営した写真を1日1枚投稿し共有するスマートフォンアプリ「My365」を立ち上げ、21歳で株式会社シロク設立と同時に代表取締役社長に就任(現任)。2014年、当時最年少の24歳でサイバーエージェント執行役員に就任。2018年株式会社CAM代表取締役、2020年株式会社タップル代表取締役に就任(現任)。2020年サイバーエージェント専務執行役員に就任(現任)。
『20代が仕事で大切にしたいこと』が初の著書となる。