仕事に慣れてきたからか、新入社員のやる気がどうも下がってきている気がする。
部下がなんだか不満を持っているようだ。
こんなふうに「部下や後輩たちの『違和感』」に気づく上司や先輩たち。
さて、どのように対処すべきでしょうか?
実は、部下や後輩が「相談」という形で放つ、よく耳にするある言葉ダークサイドに落ちてしまう「危険なサイン」が隠されているかもしれません。早く手を打たないと、本人はもちろん組織全体に悪影響を及ぼすリスクも…。
そこで、30代で経営者歴10年以上、『20代が仕事で大切にしたいこと』著者の飯塚勇太氏に、部下がダークサイドに落ちる前に放つ「要注意ワード」について伺いました。
(編集/和田史子)

書籍『20代が仕事で大切にしたいこと』の著者が教える、ダークサイドに落ちてはいけない理由とはPhoto: Adobe Stock

部下がダークサイドに落ちる前に

成長しない原因を「他人」に求める人は、自分を成長させてくれない上司や会社に不満を持ち、やがて文句を言い始めます。
さらに、順調に成長している同期をやっかみ、足を引っ張り始めます。
私はこの精神状態になることを「ダークサイドに落ちる」と呼んでいます。

いったんダークサイドに落ちてしまうと戻ってくるのは難しく、同じように周囲に不満を抱える仲間を引き込んで徒党を組むなど、組織全体にも悪影響を及ぼす可能性も。
なので上司としては、部下がダークサイドに落ちそうな気配を察知し、いち早く手を打たねばなりません

部下からの「この言葉」は危険視号

上司の立場からいえば、「ダークサイドに落ちそうかどうか」は、普段の何気ない言動を見ていればわかります

ある新入社員から、入社して1~2カ月たった頃に「上司が教えてくれない」と相談を受けたことがあります。
「これは危険信号だ」と私は感じました。

「上司が教えてくれない」
だから「私は成果を出せない」

こういった悩み相談を受けたら、ダークサイドに落ちる一歩手前のサインです。
なぜなら「上司が教えてくれない」は、明らかに自分が成果を出せない原因を「他人」に求める発言だからです。

部下としては、責任を上司になすりつけるつもりで言っているわけではありません。
最初にこの言葉を発した時点では、単に困っているから相談した程度というケースがほとんどです。

しかし、エスカレートしていくと、
・上司は自分を放置している(困った、不安だ)
・誰も自分を育てる気がない(不満だ、怒っている)
・ここにいても成長できない(あきらめた、反発してやる)

といった具合に、他責のギアがどんどん上がってしまいます。

では、部下がダークサイドに落ちないよう、どのようにフォローすればいいのでしょうか。

部下がダークサイドに落ちる前にどうフォローすればいいかPhoto: Adobe Stock

不満を課題に変換する

私はさきほどの新入社員に、「『上司が教えてくれない』で終わるのではなく、『上司が教えてくれない』という不満を課題としてとらえ、どう解決していくかを考えてみてはどうだろうと話しました。

例えば、進めている仕事の方向性が見えなくなって悩んでいるのなら、
「なんで上司は、悩んでいる自分に気づいてくれないんだ」と不満を募らせるのではなく、
「これから毎朝、○○について確認させてください」と提案してみるのです。

すると、仕事のモヤモヤは毎朝解消されることになり、精神的にもラクになりますし、上司からは「積極的に課題を解決しようとする人間だな」とプラス評価してもらえます。得なことだらけです。やらない理由がありません。
「上司が教えてくれない」と文句を言っているだけの状態とは雲泥の差です。何より、抱えていたモヤモヤやストレスもなくなります。

不満を課題に変換するPhoto: Adobe Stock

あるいは、もし自分が先輩の立場として「上司が教えてくれないんです」と後輩から相談された場合は…。

上司に対して「他者への想像力(他者想)」を働かせて考えてみては?と提案します。

上司はここのところ忙しいようだ。もしかしたら自分の姿が目に入っていないだけなのかも。自分が上司だったら「気づかなかったよ、ごめん。でも、もっと早く言ってほしかった」と思うだろうな……。であればさっさと相談するのが正解かも。
こんなふうにシミュレーションするよう促すのです。

いずれにせよ、「他人」に対して過度に期待して「待ち」の状態でいる言動は、危険信号です。

しかしそこで危険信号に気づき、思い浮かぶ「文句」を「課題」としてとらえ、どうすれば解決できるかを考えて動くよう導く。そうすれば、部下や後輩はダークサイドに落ちずにすみます。

みなさん自身も同様です。
自分の心の声に細やかに耳を傾け、「不満」や「不安」、「文句」や「怒り」が出てきたら、それを「課題」へと変えられないか、と考えてみましょう。

不満や文句から「感情」を取り除き、課題や提案という「思考」に変えていくのです。
考えてみたものの、結論が出なかった…でもまったく問題ありません。
物事が解決していなくても、考えるだけでストレスやイライラはだいぶ軽減されます

(飯塚勇太著『20代が仕事で大切にしたいこと』から一部を抜粋・改変しています)

飯塚勇太(いいづか・ゆうた)
株式会社サイバーエージェント専務執行役員
1990年神奈川県生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業。
2011年、サイバーエージェントの内定者時代に、友人らと開発・運営した写真を1日1枚投稿し共有するスマートフォンアプリ「My365」を立ち上げ、21歳で株式会社シロク設立と同時に代表取締役社長に就任(現任)。2014年、当時最年少の24歳でサイバーエージェント執行役員に就任。2018年株式会社CAM代表取締役、2020年株式会社タップル代表取締役に就任(現任)。2020年サイバーエージェント専務執行役員に就任(現任)。
『20代が仕事で大切にしたいこと』が初の著書となる。