「フェラーリ488ピスタ」で超高級会員制ドライビングクラブのコースを走行してみた筆者が試走したフェラーリ488ピスタ。軽量で運動性能に優れているため、このコースを味わうのにうってつけのモデルだった Photo by Shogo Nishikawa

高級輸入車販売のCORNES &COMPANY LIMITED(以下、コーンズ)が2023年夏、アジア初の会員制ドライビングクラブ「THE MAGARIGAWA CLUB」を千葉県南房総市にオープンする。従来のサーキットとは圧倒的に異なる、個性的な全長約3.5kmのコースを「フェラーリ488ピスタ」で走行した様子を、自動車ライターが詳細をリポートする。(自動車ライター 西川昇吾)

モータースポーツの規則に縛られない
純粋に運転を楽しむために生まれたコース

『会員権は3600万円!高級輸入車販売CORNESが会員制ドライビングクラブを始める理由』で述べた通り、7月開業予定の「THE MAGARIGAWA CLUB」は、会員権が1口3600万円(23年6月まで)もする超高級プライベートドライビングクラブだ。立地は東京都心や羽田空港から車で約60分のロケーション。全長3.5kmのドライビングコースをメインに、クラブハウスにはレストランやトレーニングルーム、温泉、プール、スパ、ファミリーラウンジを備え、1棟2.5億~8億円で完売した宿泊ヴィラも併設されている。

 そうしたホスピタリティー面には圧倒されるばかりだが、やはりクラブの主役はコースだ。ドライビングコースは、F1サーキットを数多く手掛けるTilke Engineers and Architects(ティルケ・エンジニアズ・アンド・アーキテクツ、以下ティルケ社)によって設計された。ストレート長は800m、コーナー数は22で、地形を生かしたアップダウンに富んだコースとなっている。

コースのジオラマ。コースインとアウトをするピットレーンがコースの中でも標高の高い場所にあるコースのジオラマ。コースインとアウトをするピットレーンがコースの中でも標高の高い場所にある Photo by Shogo Nishikawa

 このコースはモータースポーツ競技を行う場所ではないので、FIA(国際自動車連盟)の各種規格に合わせなくていいし、観客スタンドを考慮する必要もない。そのため、ティルケ社代表のヘルマン氏やその息子カーステン氏が、「THE MAGARIGAWA CLUBを設計するのはとても楽しかった」と語るように、スポーツカー好きなドライバーが純粋に面白いと思うコースを設計することが可能だった。

自然の山々にマッチするように設計され、起伏を生かしたコースとなっている自然の山々にマッチするように設計され、起伏を生かしたコースとなっている Photo by Shogo Nishikawa

 コースを一目見るだけで、従来のサーキットとは全く違うのが分かる。まず、メインストレートがない。通常、サーキットではピットレーンの入り口から出口まではストレートであることが多い。これはレース向けにピットガレージを配置したり、スタートを考えてグリッドをコース上に設置したりする必要があるからだ。しかし、THE MAGARIGAWA CLUBはそれらの配置を考えなくていい。

 ピット脇にある日本庭園からコース側を見てみると、曲がりくねったセクションとなっている。また、サーキットにしては道幅が狭いセクションもある。繰り返しになるが、レースをする場ではないので、追い越しや追い抜きを重視して考えなくていいからだ。このようにコース各所を細かく見ていくと、純粋に運転を楽しむために生まれたコースであることがよく分かる。

ピット脇の日本庭園(右下)からコースを見ると、ストレートではなくコーナーが連続するセクションとなっているピット脇の日本庭園(右下)からコースを見ると、ストレートではなくコーナーが連続するセクションとなっている  Photo by Shogo Nishikawa