準大手ゼネコンの三井住友建設が5月10日、2023年3月期決算を発表。前年度に引き続き、2年連続の最終赤字となった。さらに借入金の財務制限条項にも抵触し、決算短信には企業存続リスクについて記載することとなった。2期連続赤字の大きな要因の一つとみられるのが、森ビルなどが進めている東京・港区の「麻布台ヒルズ」の建設工事の遅れである。すでに巨額損失を出していると思われ、さらなる工期の遅れを指摘する声も聞こえ始めている。(東京経済東京本部長 井出豪彦)
2期連続赤字の背景にある
大型建築工事の誤算
準大手ゼネコンの三井住友建設は5月10日に2023年3月期の連結決算を発表した。最終損益は257億円もの赤字となった。赤字は2期連続で、21年3月期末に27.2%あった自己資本比率は15.5%にまで低下した。ライバル各社に大きく見劣りする水準だ。借入金の財務制限条項にも抵触し、決算短信には企業存続リスクについて記載する羽目になった。
このたびの連続赤字はひとえに森ビルが中心となる再開発組合から受注した「麻布台ヒルズ」B-1街区の超高層ビル建設現場での相次ぐ誤算によって生じている。会社側の開示では、赤字の現場は「国内で施工中の大型建築工事」という表現にとどまるが、麻布台ヒルズのことを指しているというのは業界の常識だ。
着工は19年10月。もともとの完成予定は今年3月末(工期は42カ月)だった。この現場の赤字が最初に表面化したのは2021年11月。三井住友建設が「国内で施工中の大型建築工事における採算悪化に伴い、工事損失引当金繰入額を含む206億円の損失を計上する」とリリースしたのだ。
当時、筆者は三井住友建設のIRに電話し、「国内の大型建築工事で採算悪化というのは、虎ノ門・麻布台プロジェクトのことですよね?」と確認を求めた。麻布台ヒルズはこの時点では「虎ノ門・麻布台プロジェクト」と呼ばれていた。
これに対し、IR担当者は「どこの現場かについては発注者との関係があり、投資家の皆さまなどには申し訳ないが、これ以上の開示ができない。ただ、今回の赤字は単独の現場によるものと理解していただいて構わない」との回答があった。
当時から森ビル側を刺激しないよう、相当気を使っていることはうかがえた。三井住友建設は現在まで具体的な現場名について口を閉ざしている。