土地の仕入れやマンション販売で独特な手法を展開する財閥系デベロッパーの住友不動産は、業界で異彩を放つ。独特なのは人事制度もしかりだ。ノルマ未達によって、社員は年収激減や降格にさらされるといううわさが絶えない。特集『不動産デベ新序列 バブル崩壊前夜』の番外編では、業界最大の謎ともいわれる住友不動産の人事制度と給与体系を本邦初公開する。(ダイヤモンド編集部 堀内 亮)
退職者が不満をぶちまける
「住友不動産はブラック」
三井不動産、三菱地所、住友不動産、野村不動産ホールディングスの大手不動産デベロッパー4社の中でも、住友不動産は異彩を放つ。
収益の柱について、三井不動産、三菱地所、野村不動産ホールディングスが自社で開発したオフィスビルや商業施設などのテナントから得られる賃料収入(インカムゲイン)と不動産売却益(キャピタルゲイン)の二つを据えているのに対し、住友不動産はインカムゲイン一本足打法を徹底している(本特集#2『住友不動産が「日本一の大家」戦略で財閥系下剋上へ、バブル崩壊で三井不・三菱地と明暗』参照)。
仕入れた土地の用途を変更したり、数年間かけてじっくりとマンションを売り切ったりする住友不動産のビジネス手法は、ライバルと一線を画す。財閥系不動産会社のある社員は「とてもまねできない」と舌を巻く。
そして、もはや不動産業界関係者の間で“常識”となっているのが「住友不動産はブラック」という評判だ。これは、住友不動産が手掛けるオフィスビルやマンションのイメージカラーを指しているわけではない。
住友不動産は職場環境が悪い、つまりブラック企業だというものだ。住友不動産を退職して同業他社に転職した「ヤメすみふ」が、その“ブラック”ぶりを、至る所でぶちまけていることが背景にある。
徹底した実力主義でノルマが厳しい。ノルマを達成できなければ年収が激減する。成果を上げられなければ、降格させられる。プロパーでなければ出世できない――。住友不動産を巡るブラックなうわさ話は、とにかく絶えない。ある財閥系デベロッパーの中堅社員は「すみふは謎過ぎる会社」と評する。
果たして真相はいかに――。
そこで取材を申し込んだところ、住友不動産の担当者は「当社は従業員ファーストな経営を目指している。世間は(住友不動産を)誤解している」と釈明。業界最大の謎といわれる住友不動産の人事制度、そして巷間でささやかれるさまざまな“都市伝説”についても、住友不動産側が徹底解説してくれることになった。
次ページからは、ベールに包まれていた住友不動産の人事制度を本邦初公開。社員構成や給与体系に加え、30代半ばで課長に昇進した際の具体的な年収額について明らかにする。ノルマ未達となった場合、年収が100万円も下がるという“都市伝説”の真偽についても明かす。