敵対的買収を仕掛けられた会社の経営陣はどう行動すべき?M&A専門家が回答Photo:PIXTA
*本記事はきんざいOnlineからの転載です。

 本連載では、企業の代表やアセットオーナーなどへのインタビューを通じ、ステークホルダーとの対話や対外戦略におけるヒントを12回にわたって掲載している。3回目は、昨年11月から始まった、経済産業省「公正な買収の在り方に関する研究会」で委員を務めている森・濱田松本法律事務所の石綿学弁護士。

敵対的買収を仕掛けられた会社の経営陣はどう行動すべき?M&A専門家が回答森・濱田松本法律事務所 石綿 学 弁護士

経営陣は行動クオリティーの向上を目指せ

――経産省が昨年11月に設置した「公正な買収の在り方に関する研究会」では、上場企業の買収を巡る当事者の行動の在り方などについて、新たな指針の原案を公表しています。今回の指針策定の背景と狙いはどのような点にありますか

 経産省は昨年11月に「公正な買収の在り方に関する研究会」(座長=神田秀樹学習院大学大学院法務研究科教授)を設置し、近年の同意なき買収や競合的な買収の増加を念頭に、上場企業の買収を巡る当事者の行動の在り方を中心とした新たな指針の検討を開始した。これまでに8回の会合を経たが、指針は原案の段階だ。最終的な指針は、遅くとも株主総会シーズン後に策定される。

 今回の取り組みの大きな目的は、上場会社の経営支配権を取得する買収を巡る「当事者の行動の在り方」を示すことにより、日本において企業価値の向上と株主利益の確保の双方に資する買収を活性化させることにある。個人的には、同じ業界に企業が林立している日本において、良い買収が活発に行われることで業界再編がより促され、グローバルに通用する企業が多く生まれることを期待している。

 日本におけるM&A実務や判例・学説の成熟・進歩も背景にある。2005年に、いわゆる買収防衛策に関する指針が策定されて以降、多くの実務や判例・学説が積み重ねられてきた。この18年間の議論の蓄積を整理し、グローバルなM&Aの実務慣行を踏まえ、マーケットに対しても十分説明できる水準でのベストプラクティスを提示しようとしている。