「言いたいことがあるのに、言葉がパッと出てこない」「話してるうちに、何が言いたいか見失う」
言語化に関するあらゆる悩みを、著書累計180万部を超える言語化のプロが一気に解決する1冊、『すごい言語化 「伝わる言葉」が一瞬でみつかる方法』(木暮太一著)が発売された。本記事では同書をもとにその方法の一部を紹介する。
商品をつくるときに必ず考える「差別化」の壁
ぼくは本を書く作家でもありますが、同時に出版社も経営しています。出版業界では、他の本との「差別化」をかなり重要視していて、「これまでの本とどこが差別化できるか」を常に考えています。
かつてぼくの出版社で本を出すとき、編集を担当していたメンバーから差別化のための作戦を聞きました。
「この著者の過去の本や、同ジャンルの本と差別化するために、今回はイラストレーターを変えます。イラストをガラッと変えれば差別化できると思います」
その本の著者さんはこれまできれいめなイラストを多く使用していました。その方の好みなのでしょう。今回も同じようにきれいめのイラストを使うと、これまでの本と同じ印象になってしまう、だからイラストのテイストをガラッと変える、ということでした。
ただ残念ながら、これは差別化ではありません。イラストを変えたからと言って差別化はできません。
イラストを変えることでできるのは「区別」です。
イラストを変えれば、他の本と区別できるので、過去の本と間違われることはないでしょう。でも区別できれば買ってもらえるわけではありません。
差別化は、区別してもらうために行うものではなく、「別の商品ではなくあなたの商品を選んでもらうため」に行い、そのような要素でなければいけません。
何に着目すれば差別化が表現できるのか?
先日、新しくテレビを買いました。家電量販店には何十台もモデル機種が並べられていて、どれもすごく画質がきれいです。どの機種も同じように高性能で、サイズ以外はすべて同じに見えます。おそらく、テレビを買いに来たほとんどのお客さんがサイズ以外は自分に合ったものを選べないでしょう。
店員さんに声を掛けると「液晶と有機ELはどちらがご希望ですか?」と聞かれました。ですが、ぼくはその2つの区別がつきません。それぞれの特性を教えてもらいましたが、それがぼくの生活にどう影響するのかはわかりませんでした。
その他にも店員さんは丁寧に教えてくれます。この機種はYouTube やNetflix、ABEMAのボタンがついていてすぐ見ることができる、とか、この機種は非常に薄型で場所を取らない、とか。どの売りポイントも意味はわかれど、ぼくには響きませんでした。さらにいえば、最近の機種はどれもネットにつながり、どの機種も簡単操作でYouTubeなどを見ることができます。そして特に薄い機種でなかったとしても、だいたい薄いです。
つまり、どの売りポイントも「五十歩百歩」なんです。
他社よりも少し優れているところを猛烈にアピールされますが、その機種でなくても許容範囲です。となれば、その機種でなくてもいいし、「この点があるから選んでもらえる」という差別化ポイントにはならないんです。
これと同じような経験、あなたにもあるのではないでしょうか?
差別化は「他の商品との違い」ではありません。また、「他の商品と比べて優れている点」でもありません。
差別化とは、「他のものではなく、あなたのその商品サービスを選んでもらうために打ち出すもの」です。
そして選んでもらうために必要なのは、「その目的は、他社商品では手に入れられません。うちの商品であれば手に入れられます」を言葉で伝えることです。
他社商品では顧客がやりたいことができない、うちの商品だったらそれができると伝えることが肝なんです。
こう捉えてみると、かなりすっきりと見えてきます。先ほどの「イラストを変えて差別化を図る」といわれても意味がわからないですね。「他と比べて格段に薄いテレビ」も「テレビが格段に薄いことで、できるようになること」がわからなければ、惹かれるはずもありません。