消費不況にあえぐコンビニエンスストアと外食業界に、一縷の光明が見られる。
今年1月以降、フランチャイズ(FC)オーナーの応募者が前年実績を上回り続けているのだ。コンビニ業界最大手セブン‐イレブン・ジャパン、3位のファミリーマートでは、応募者が上半期で前年同期比約70%増、インターネット経由での応募が約2倍になった月もあった。2位のローソンも増加傾向が続いているという。
外食業界も同様だ。「モスバーガー」を展開するモスフードサービスの青木幸三郎立地開発部シニアリーダーは「春先から少しずつ増えている」と話す。
両業界にとって、新規オーナーの獲得はここ数年の課題。新規オーナー募集の説明会を開いても閑古鳥が鳴く状況は珍しくなかった。そのため、一部コンビニでは加盟金を格安にした新たなFC契約パッケージを開発するなど、あの手この手で人を呼び込んでいた。
応募者が増加している背景には厳しい労働環境がある。6月の完全失業率は5.4%で過去最悪の5.5%に迫り、有効求人倍率は0.43倍と過去最低を更新している。求職者は正社員の再就職が難しいため、FCオーナーとして独立する道に目を向けているのだ。加えて、「社内価値よりも社外価値、自分の雇用は自分でつくるという価値観の変化も応募者増の要因の一つ」と独立・開業情報誌「アントレ」の藤井薫編集長は分析する。
ただ注意も必要だ。「職がないため、いわば仕方なく独立する人は、後に契約内容やビジネスがうまくいかないなど、本部とのトラブルを抱えるケースがある」とFCビジネスに詳しいフランテック法律事務所の金井高志弁護士は指摘する。今と似た状況はバブル崩壊後の景気後退期にも見られ、トラブルが増加したことがあったという。
コンビニ・外食業界は熾烈な過当競争を繰り広げている。FCでの独立は、成功すれば会社員時代の年収を上回る可能性もあるが、現実は厳しいことを直視しなければならない。
(「週刊ダイヤモンド」編集部 片田江康男)