今、「学校に行かない子どもたち」が、とても増えています。小・中学校の長期欠席者は41万人(うち不登校が24万5000人・令和3年度)にのぼり、過去最高を更新しています。本連載では、20年にわたり、学校の外から教育支援を続け、コロナ禍以降はメタバースを活用した不登校支援も注目される認定NPO法人「カタリバ」の代表理事、今村久美氏の初著書「NPOカタリバがみんなと作った 不登校ー親子のための教科書」から、不登校を理解し、子どもたちに伴走するためのヒントを、ピックアップしてご紹介していきます。「不登校」という事象について考えるときに、本人へのケアという個人に着目した視点と、教育環境との相性や教育制度など、個人を苦しめている社会の側に視点をおいた考え方など、幾つかの視点があります。ここでは個人に着目した考え方の一つを本書から紹介します。
「先生に責められた」気持ちになる親御さんは意外に多い
学校と家庭の方針は、必ずしも合うわけではありません。
考え方が違ったとしても、子どもが笑顔を取り戻すことを共通の目的として冷静に話し合うことができれば、そこから今後の道筋を探ることもできるでしょう。
でも、先生にそのつもりがなかったとしても、一方的に責められたり、不安をあおられたりするような気持ちになった……というお話を親御さんから聞くことは残念ながら少なくありません。
不登校の中学1年生・Dくんのお母さんは、担任の先生から「他の子と同じことができないからダメだ」「Dくんの頑張りが足りないのが悪い」などと責められた気持ちになったそうです。そこでDくんの気持ちを説明したところ、「子どもの言うことをすべて信じないでください」と返され、先生を信頼できなくなったと言います。
先生は“先生”という役割のひとりの人間
大人同士でも相性があるように、先生と子どもの相性にも当たり外れがあります。
また、「ブラック労働」が話題になるくらいに、先生の仕事は多岐にわたって忙しいもの。たまたま疲弊してイライラしていることもあるでしょう。
組織人のひとりとして、自分のクラスで不登校の子どもが出たのは自分の力不足だと過度に責任を感じ、思い悩んでいるかもしれません。
先生は、たまたま“先生”という役割を担っているだけであって、ひとりの人間です。決して神聖視する必要はありませんし、逆に何かあっても絶望する必要もありません。
そこを理解した上で、先生に相談をしに行く時は、「クレームモード」ではなく、「相談モード」でいくのがおすすめです。
親御さんが初めて学校に相談をしに行く時は、気づいたら涙がこぼれそうなほど、不安でいっぱいだと思います。こういう時は、いつもより感情的になっているもの。まずは、深呼吸をして、少しでも平常心を取り戻して向かいましょう。
そしておそらく先生のほうも、何か言われるのではないかと身構えているはずです。
そんな時に「学校が嫌だと言っています。思い当たることはありませんか?」と、攻撃的に言うよりも「学校に行くのを嫌がっていますが、どういう状況なのか知って、なんとか元気を取り戻せるよう支えたいので、一緒に考えていただけませんか」と言ったほうが、きっと親身になってくれるはず。
「一緒に問題を解決するためのパートナー」になってもらいたいという気持ちを伝えるようにしましょう。
担任以外に相談することに罪悪感を持たなくてもいい
担任の先生とうまくいかない時には、教務主任、保健の先生、副校長先生など、別の先生に相談しても構いません。
小学校3年生のEくんのお母さんは、担任の先生と分かり合えないと思ったので、学校に電話して「教頭先生とお話ししたいのですが、いらっしゃいますか」と、直接取り次いでもらい、旧知の教頭先生に相談されました。その後、窓口が担任の先生から教頭先生に替わり、事態が好転したそうです。
子どもとよい関係を結んでいた過去の担任の先生や、スクールカウンセラーを頼るのもよいと思います。
学校の中に相談できそうな人が見つからなくても、教育支援センターなど、外部の頼れる公的機関もいろいろあります(本書の第5章を参照)。
一ヵ所でダメだったからといってあきらめるのではなく、ジタバタしているうちに、どこかから情報が入ったり、味方になってくれる人につながったりすることは多いもの。働いている親御さんには大変だと思いますが、信頼できる仲間を見つけるつもりで動いてみてください。
*本記事は、「NPOカタリバがみんなと作った 不登校ー親子のための教科書」から抜粋・編集したものです。