東証のPBR改善要請がアクティビストを後押し?「株主提案数」が最多記録更新Photo:PIXTA
*本記事はきんざいOnlineからの転載です。

 ここ数年、株主提案を受ける上場企業は急増してきた。その中で特に活発化しているのが、自社株買いや増配といった株主還元の強化を求めるアクティビストによる働き掛けだ。そして、PBR改善に向けた取り組みを促す東京証券取引所の要請が、その追い風となっている。アクティビストの株主提案が多くの賛成票を集めれば、「物言わぬ株主」の思いを体現するものとして、企業に対する強いプレッシャーとなり得る。

株主提案で表面化するアクティビストの行動

 2023年6月総会で株主提案を受けた企業数は90社を超え、過去最多だった昨年6月の75社を上回る見通しとなっている。年間を通してみても、23年は過去最多だった22年を超えてきそうだ。

 特に存在感を高めているのがアクティビスト。21年7月~22年6月の1年間に、株主総会で株主提案議案を付議した上場企業は96社あり、うち47社がアクティビストを含むファンドからの提案だった(注1)。内容は役員選解任、報酬制度改定なども珍しくはないが、やはり増配や自社株買いといった株主還元関連が多い。

 23年に入ってからも、アクティビストの動きは活発だ。しかも、株主提案だけでなく、インターネットなどを利用したキャンペーンを展開して上場企業と対話に臨むケースもより目立つようになってきた。特に増配や自社株買いは、こうした上場企業との対話でも頻出するテーマとなっている。

 地方銀行界でも、増配や自社株買いを要求するアクティビストの動きは注目されている。22年には、英国のアクティビスト・ファンドであるシルチェスター・インターナショナル・インベスターズが、国内の四つの地方銀行に対して増配を求める株主提案を実施し、一部の銀行では、賛成率が20%を超えた。23年も、そのうち京都銀行に対しては同様の株主提案を続けている。今や、アクティビストに限らず投資家から、株主還元に関して何らかの要望を受けていない銀行は存在しないのではないか。